第11話 少年編10

春子と隆司は目的の場所に到着し、先ほどの大家族に感謝しながらレジャーシートを敷いてその場所を陣取る。


汗だくで遅れて到着した隆一は、両手に抱えた沢山の荷物を半ば投げ捨てるように置くとそのままその場所にへたり込む。


さすがにこの炎天下の中、寝不足で何時間も運転して、荷物をたくさん運搬するという過酷な労働条件では、二十代前半の隆一もバテて当然だ。


それに反して春子と隆司はたっぷり睡眠もとれて、スッキリ爽快リゾート気分で、


「はるしゃん、きれいね。」


と隆司が波打ち際を物珍しそうに見てつぶやくと、


「綺麗やねぇー!」


と海水浴が初めての我が子の言葉に春子もご機嫌で答える。


みんなの荷物を運び、横でへたっている隆一の存在などは素無視だ。


父親とはその程度のものだと隆一は欠伸をしながら改めて認識する。


まあ、でも、家族がそれなりに楽しんでくれればそれ幸いだと、心根が優しく、お人好しの隆一は思ってしまうのだ。

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