第8話 少年編7

隆一もあきれ顔で、


「ざるそばなら入ってるけどなぁ。俺の分だけやけど~。」


と冗談混じりで春子の失態をからかうが、当の春子はそれどころじゃない様子で隆一の冗談をスルーしてどうするか考え込んでいる。


そしてそこへ、これまたタイミングよく大人数の家族づれがやってくる。


ただでは転ばない大阪のおばちゃんパワーの見せ所だ。


その家族連れのふとした会話を春子は聞き逃さなかった。


「お父さん!いっくらうちの家族が多いからってこんなにシートやパラソル要らんし!ただでさえうちはいつも民族大移動みたいで荷物が多いのにっ!」


とその大家族の母親が旦那さんに抑圧的な口調でグチる。


旦那さんは大きな声で叱られて、小柄で細身の体がさらに小さく見える。


春子はどこの家庭も一緒だなと思い、少し苦笑いしつつも、すかさずその大家族のあらゆる最終決定権を持っているであろう母親に満面の笑みで話しかける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る