第7話 少年編6

そして後ろを振り向くと、当然のごとく幸せそうな顔で寝息をたてている親子がいる。


隆一はため息をつきながら少し薄笑いを浮かべたあと、大きな声で、「つきましたでー!ねーさん!」と春子に顔を近づけて言う。


さすがに熟睡していた春子も目を覚まし、「なに大きな声出してるんよ~!」と寝起きの不機嫌そのものの顔で隆一をにらむ。


すかさず隆一も、「よーく寝てはりましたなあ。」と少し不満そうな顔でグチる。


「寝てへんわ~、目ぇ~つぶって考え事してただけやし~。」とふざけてアッサリとかわされる。


"口を大きく開けていびきかいて寝とったがな"と心の中で思いながらも、やはりこの嫁には口では勝てるわけないと思い、「はい、はい」と空返事をしながら、諦めて海水浴場へ行く準備をする。


春子も、今だに何事も無かったように眠っている隆司を起こして自分も身じたくを整えながら、ある重大な忘れ物に気付く。


レジャーシートだ。


春子は、「なあ、なあ、クーラーボックスの中にレジャーシートとか無いわなぁ」とトランクからそのクーラーボックスを取り出している隆一に恥ずかしそうに問いかける。


「あるわけないやろ~」と隆一はこいつは何を言ってるんやという顔で答える。


レジャーシートやで!普通、冷やさんやろ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る