Change ,Junior
中学生にもなり、相変わらず彰悟の方言は抜けなかったものの、彼はバスケ三昧の生活を送っていた。
「今村先輩、お疲れ様です」
同じ中学に入った桜は幼馴染という存在ではあるが、学内では先輩と後輩。
小学生の頃は、彰悟の彰からしょうちゃんと呼ばれていたのに、急に先輩と呼ばれることになって少し寂しい気持ちとこそばゆい気持ちがある。
桜は女子バスケットボール部に所属し、たまに一緒に男子バスケ部と女子バスケ部が練習することもあり、一緒に帰宅することもあった。しかし、以前よりも二人でいることが減ってしまっていた。
それにだ、中学になってから髪の毛を少し伸ばしたりと急に桜が変わってしまったこともあって慣れない。
そして、今村は現在中学三年生。受験シーズンでもあり、部活引退の時期。
部長として活動していたため、夏のこの時期は引継ぎなどで後輩とよく出会う。
「あ、花里先輩もお疲れ様です」
彰悟の後ろに控えていた花里 晶にも桜はきちんと声をかける。
花里は今村の一個下、桜の一個上であり、中学になってからの付き合いである。
頭もよくポテンシャルもいいため、花里を次期部長にと考えている今村であった。
「おう」
それじゃーと言って桜はパタパタと去っていく。
ああ、前みたいに世間話をすることも減ってしまって距離が離れた気がする。
思春期っていうもんな、この時期。
心も変わっていく。
前と同じじゃいられない。でも、前と同じでいたいのに。
そんなことは言えない気がした。
だから、声をかけれなかった。声をかけずに桜の背中を見送った。
「さくら」って呼べばきっと振り返って、どうしたんですか?って言ってくれるのに。
でもそんな勇気は、いつの間にか無くなって。
残ってしまったのは寂しいな、この気持ちだけ。
* * *
受験を大きく失敗することもなく、今村はバスケもできる進学校に進学することに決めた。
卒業式は、男女バスケ部の後輩から色紙を貰った。一番に探してしまったのは桜の欄だった。
「先輩、いつもお疲れ様です。先輩の頑張る姿に憧れていました」
そんな人並みな言葉のはずなのに、すごく嬉しく思った自分がいた。
そんな桜は女バスの先輩に先輩寂しいですと言って抱きついていた。
自分はと言えば、先輩バスケ辞めないでくださいねと花里にニヤニヤされながら言われた。
でも、誰かに何かをねだられることもなく、制服は綺麗なままで中学生活を終えた。
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