Critical Point ①
温暖な気候に青い海。綺麗な街並みの上に浮かぶ大きな雲。その中のひとつを指さして「ピザだ」と呟く。そんな腑抜けた相棒の隣に座り、買ってきたホットドッグを地面に置き、自分の分を大きく口に頬張る。
「イタリアなのにホットドッグ」
「我慢だぞと。この辺の屋台はホットドッグ屋1個しかないんだよ」
不満そうにもそもそと口に運ぶ相棒を横目に海を眺めながら、欠伸をひとつして、任務の後に与えられる休暇を満喫していた。
満喫していたと言っても、失敗の後の休暇は心地が悪いため、上手くいかない時はいつもイタリアの海を眺めに来る。
ぼーっと見続ける海は相変わらず穏やかで、寄せては引いていく波は、同じ時間が何度も繰り返している様に錯覚させてくれる。
「レオ」
「どうかしたかオペレーター」
「休暇中悪いのですが、彼らが見つかりました」
「お仕事か」
「申し訳ないです」
「気にすんな、そう言う仕事だぞ、と」
小さい口でちまちまホットドッグを食べる相棒を半ば引きずりながら歩いていると、突如飛び出した小さな体の予想以上の力に引っ張られる。手の中から離れようとする服を必死に掴んで止めようとしたが、既に瞬速を誇る相棒は手の届く場所に何も残さなかった。
「あ、おい! このまま行き着く場所まで尾行だぞ!」
いつも通り投げ捨てられた服や装備品を回収して、相棒が単独で追跡を開始した事をオフィスに報告する。肩を落としながらも膝に手を着いて気合いを入れ直し、足に力を入れ直して走り出す。
「追跡を許可します。有事の際の発砲と交戦の申請も承認されました」
「ほんと上は何考えてるんだ、あんな向こう見ずを使い続けて」
「担当のあなたが切ると言えばすぐに切られます。手に余るのであれば切れば良いのでは?」
「まだ組んでひと月も経ってないのに、もっと見てからだろ」
半ば呆れ気味に聞く機械の向こうが、やれやれと首を振っているのが安易に想像出来る。やや癖はあるものの、実際に結果は出している事から切りあぐねてるのも事実。
出自も経歴も不明。それなりに近接戦闘も仕上がっているし、射撃訓練も安定して平均点を上回っている。
その経歴から得体の知れない不気味さを感じながらも、そんな不気味さを杞憂と思わせる程本人は抜けている。
「さて、お仕事だぞ と」
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