Rendezvous Point ③

 ターゲットを見失ってから約5分。全ての装備を捨てた彼女は信じられない速度で追跡を続けていた。入り組んだ道を反響する2つの遠い足音だけを頼りに追い続け、それが2人のものだと確信だけを持ちながら足を前へと動かし続ける。


「方向が変わった、港の方。報告しないと。報告……」

 5回程瞬きをしてから考える事をやめ、走りながら自分の進行方向の斜め上に向かって煙弾を撃ち上げる。そして一際狭い路地に駆け込んで、左右の壁を交互に蹴って屋根に飛び登る。


「っのやろ、相棒を置いて行きやがって。でもそのお陰であいつらが港に向かってるのは分かった、今回は御手柄だぞと」

 相棒の脱ぎ捨てた服や機材を回収し終えた男は、空に伸びた臙脂色の煙弾を目印に、港の方向へと向きを変えて走り出す。


 グラップルガンで屋根に上がって再び追跡を再開すると、約100メートル先に月明かりに照らされる相棒の背中が見えた。

「あ、待てこのやろう! 服も装備も捨ててくんじゃねぇ!」

 すぐに相棒の背中を追って屋根から屋根へ飛び移り、それほど広くない城壁の中を駆け回る。巧みにグラップルガンを使って小さな背中に追い付いて機材と服を手渡し、相棒を抱えながらグラップルガンを城壁に発射して一緒に空へと舞い上がる。

ワイヤに引っ張られた2人の体は城壁を優に飛び超え、こんな時間に出港の準備を進める影が動く船にピンポイントで着地する。

「よぉ、今夜の漁は大漁になりそうだな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る