Rendezvous Point ②

 何者からの尾行に気付いたのはほんの少し前。月の光を2つの影が一瞬遮った。1人は線の細い狙撃手、もう1人は細身とだけしか分からなかった。


 それに気付いた瞬間とにかくアリスの手を引いて走り出した。昨日まで無かった影を振り切る為に右へ左へ、自分でも方向感覚が分からなくなるほど不乱に走った。

「なに!?」

「船に乗ろう、せっかくのドゥブロヴニクなんだし」

「乗れる船なんてあるの?」

「任せろ、何とかする」

 そう言ってポケットから取り出したスマホを操作して、誰かが電話を取るのを走りながら待つ。


「Cracks1からOffice、ドゥブロヴニクで船を手配してくれないか」

「うちの管轄外だ」

「頼む、NSBからマークされてる」

「自業自得だばか、Hell Houndのマークが目印の高速艇がある。好きに使え」

「やっぱある!」


 ドゥブロヴニクで海を見たいならとにかく月の反対の方へ走れ。そう言ったいつかの笑顔が思い浮かんだ。


「なぁ、お前に夢はあるか」

「……ある」

 少しだけ何かを考え込むように返事を返したアリスは、言った瞬間に前を向いて走り続ける。

「どんな夢?」

「自分勝手な大人を皆やっつけて、平和な世界を創ること」

「自分勝手な大人? ってのをどうやって見分けるんだよ」

「私腹を肥やすやつだったり、あと子どもを縛り付けたり苦しめるやつ」

「つまり、自由と子どもの味方ってことか。良いな自由、俺も大好きだ自由!」

「自分勝手な大人が子どもの邪魔をするから、子どもが不自由を感じて犯罪に走る。この悪循環を私は断ち切りたい」

「よし、じゃあまずはここから脱出だな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る