第7話 仲間を増やす方法

 俺はもっと強くなりたい。そのためには、もっと経験を積んでいかなければならない。


 スライム狩りは危険性が殆ど無いけど、経験値は少ないはずだ。


 それに雑魚と戦うのも飽きたし、効率よく経験値を稼ぐためには、大物を狙うという手もある。


 ちょっとセーミスちゃんの意見を聞いてみよ。


「セーミスちゃん、俺はもっと手応えがあるモンスターを挑戦したいけど、これについてどう思う?」


「そうね・・・今のカイン君のレベルなら、樹精といい勝負できるかもしれないね」


「じゅ、受精!?」


 セーミスちゃんの顔がみるみるうちに赤くなる。


「も、もう!違うよ!カイン君は本当にえっちだよ!樹精というのは、樹木の精霊みたいなモンスターのこと!」


「そうなのか。もしかして、エルフ?」


「それも違うよ。エルフは耳長族の亞人で、人間らしい姿をしていて、人間より高い知能を持っている。それに対して樹精はただの樹木に顔が生えたような化け物で、知能指数がスライム並のおバカさんですよ。まあ、化け物といっても、弱い部類に入るような中級魔族だから、今のカイン君も勝てるよ」


「じゃあ、今すぐその樹精と戦いに行こう!」


 セーミスちゃんは走りだそうとする俺を止めた。


「待ってよ。カイン君は疲れているんでしょ?せめて魔力が回復するまで待ちましょう」


「回復アイテムとかはないのか?」


「ないよ。わたしもこの世界をかなり長い間探索したけど、全然アイテムが手に入らない。薬草ならこの森のどこかに生えているかもしれないけど、鑑識魔法の専門スキルを持てない限り薬草採集は無理ですよ」


「え、アイテム縛りって無理ゲー過ぎない?」


「そうなのよ。だから仲間が欲しい。でも、わたしと契約できる人数は一人だけだから、もう仲間は増えないよ」


 その時、俺はセーミスちゃんのステータスを思い出した。


「セーミスちゃんって確か、使い魔教育というスキルがあったな。それを使って魔物の仲間を増やす事ができないか?」


「それは、やってみないと分からないけど、そのスキルには条件があるの・・・」


「条件というのは?」


「えっとね、これは、あんまりカイン君に教えたくない・・・本当に言わなくちゃだめ?」


 珍しく弱気になるセーミスちゃん。ちょっといじめたくなってきた。


「セーミスちゃん、俺に隠し事?彼女なのに?」


「ち、違うよ!わたしはただ、カイン君に変な勘違いされたくないから!別に隠したいわけじゃないから!」


「じゃあ俺に教えてくれよ。まあ、今のセーミスちゃんの反応で俺も薄々気付いたけど、恐らくえっちな事だろう?」


「え・・・うん、そうだよ。魔物を使い魔にするためには、その、性的な事をして、その魔物を、その、イかせなくちゃならないから。でも、わたしはまだしたことないよ!本当だよ!」


 ・・・まあ、大体俺の想像通りだ。


 しかし、困ったな。いくら強くなろうとも、回復アイテムがない限り迷宮を踏破するのは無理がある。となれば、もっとたくさんの仲間が必要だ。


 でも、仲間を増やす手段は使い魔のみ。使い魔を教育するために、セーミスちゃんを犠牲にして、モンスターとえっちさせる?いやいやそれは絶対嫌だ。ダメ、ぜったい。


 くそ、いったいどうすればいいか?


 方法はきっとあるはずだ!諦めるな!考えろ!考え続けろ!


 必死に考え続けた結果、妙案が頭に浮かんだ。


「そうだ!セーミスちゃん、俺を犠牲にすればいいさ!」


「え?」


「要するにこうだ。俺が教育係になればいいじゃないか。俺がモンスターに刺激を与えて、興奮させて、その間にセーミスちゃんがスキルを発動!っていうのはどう?」


「できるかどうかはまだ分からないけど、本当にいいの?」


「もちろん!あ、できれば、教育対象のモンスターはメスの人型限定で頼む。オスや化け物相手なら、やりづらいからだ」


「・・・カイン君、それ全然犠牲になってないよ」


 まずい!セーミスちゃんの視線が冷たい!


「ごめん、俺も彼氏としては浮気のような真似はしたくない。でもこうするしかないだろう?他になんの方法もないから」


 セーミスちゃんはため息を漏らして、悩むような表情で俺の目を見た。


「・・・カイン君、一つだけ、約束してもらうね・・・他の女と、えっちな事をしてもいいけど、わたしだけを愛して」


「はい、約束するよ。俺が愛する人はセーミスちゃんだけだ」


「わたしも、だよ。カイン君」


 セーミスちゃんが目を閉じて、俺にキスを求めてきた。


 彼女の少し震えた桜色の唇に、俺は自分の唇を重ねる。


 二度目のキスは、前よりすこし長い。


 まるで俺の気持ちを確認するように、彼女の柔らかい舌が俺の口に入れた。


「んん・・・カイン、くん・・・ちゅ、ちゅう・・・」


 ああ、何という甘美な味だろう。幸せが口の中でいっぱいに。


 できればずっとこうしていたい。


 だけど、幸せの時間が無限に続くわけがないように、セーミスちゃんはゆっくりと唇を離れた。


「カイン君、他の女とキスするのはぜったいダメだよ。カイン君とキスしても許されるのは、わたしだけなんだから」


「はい、もちろんだ」


 えっちはいいのに、キスは禁止。珍しいルールがこの瞬間に成立した。

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