第8話 強敵現る!樹精ジュリア
セーミスちゃんの提案を受け入れ、俺は樹精というモンスターを見つけ出し、そいつを襲うことになった。
「敵を燃え尽くせ!ファイアボール!」
ドォカーン!ボォオー!メラメラ!
俺のファイアボールが見事にクリティカルヒートした。
「ギャアアア!」
効果絶大のようだ。醜い人面を付いた樹木のモンスターは反撃もできないまま、一方的に焼き殺された。
「ふぅー、こんなものか」
「すごいね、カイン君!」
「ふふ、まあな」
植物系には炎属性で対応すれば楽に勝てる。でもよく考えれば、今の俺は炎属性しか使えないからな。これからは別の属性も使えるようになれるといいな。
そのためには、もっとたくさんの敵と戦えなくちゃ。
「よし、次行くぞ!」
だが、戦意高揚の俺をセーミスちゃんが止めた。
「カイン君、気をつけてください!ボスが来ますよ!」
「え?ボスって、ここらへんは確か雑魚しか出てこないエリアだったはず・・・」
「わたしも今までずっとそうだと思ったんだけど、どうやら進化できる個体もいるみたい。今テレパスィで探知した個体はかなりの魔力を持っています、恐らく激しいバトルになるはずです!とにかく気をつけて!ヤバイと感じた場合はすぐ逃げる事!」
「はいはい、じゃあとりあえず様子を見てみるか。セーミスちゃん、ボスはどこだ?」
「前方!すぐ近くです!」
「すぐ近くって、全然見えないんだけど・・・」
まさに俺が油断したその瞬間だった。
ヒューーーー!
大量の葉っぱがいきなり強風とともに飛んできた。
ただの風にしては、妙に音がでかい。鼓膜が裂けそうだ。
「危ない!避けて!カイン君!」
俺は咄嗟に横へジャンプして、なんとか攻撃を避けた。
ビューー!!
葉っぱを巻いた強風はまるで強靭な刃のように、空間を切り裂いていく。パサパサと切断された枝や葉が空中に撒き散らした。
今の風攻撃がもし俺に当たったら、俺はいったいどうなるのか。想像しただけでおぞましい。
「な、なんだ今のは!?」
「風属性の魔法攻撃です!気をつけて、また来ますよ!」
セーミスちゃんの予告通りに、次の風刃が前方から飛んでくる!
「くそ!」
俺は全力で横へ走りだした。幸いなことに、あの風魔法の飛行ルートは直線的で予見しやすい、集中力を高めればギリギリ避けられる。
だが、俺はまだ敵の姿を発見していない。つまり反撃できないということだ。このままじゃ一方的にやられる!
「セーミスちゃん、敵の位置を教えてくれ!」
「テレパスィの反応によると、前方の一番高い木です!」
「そうか。ついでにステータスも!」
「了解!えい!」
対象:樹精ジュリア
状態:活性化(数値上昇中)
職業:無し
精神:120/60
生命:289/300
攻撃:180/120
防御:150/100
速度: 10/8
特性:植物系魔族(無知的・成長が早い・無感情な生物)
魔法の才能(水/風)
魔法耐性(水/風)
弱点(炎)
特技:自動防衛反撃(オートカウンター、射程内に侵入した動物を自動攻撃)
画地為牢(アースプリズン、相手を鈍足状態にする)
風刃(ウィンドカッター、風属性攻撃魔法)
治癒の水(アクアヒール、水属性回復魔法)
必殺:緑の嵐(グリンテンペスト、広範囲物理攻撃)
さすがボスというわけか、数値だけなら俺より上だ。
だが、勝てないわけでもない。無知な相手に対して、知恵は最大の武器だ。
とりあえず射程外まで撤退する。そうすれば敵の攻撃も止まるはずだ。
そうと決めた俺はすぐ敵と真逆の方向に全力疾走。
セーミスちゃんも気付いたように、すぐ俺と同じ行動をとった。
一直線で森を走りぬけ俺は振り返る。予想通り、攻撃は来ない。
「はあはあ、ぜえぜえ・・・よし、とりあえず安全を確保できた」
「カイン君、これからはどうするの?」
「ここで作戦を考える。あのままあそこに留まると、やつに殺されるかもしれないからな」
「そんなこと、わたしはさせないよ。わたしは死んでもカイン君を守るよ」
「ありがとう。で、セーミスちゃん、俺の精神力はどれくらい残ってた?」
「今は65になってるよ」
「この数値だと、あのボスにどれくらいのダメージを与えるのか?」
「弱点を突くとダメージが二倍になるから、ダメージ130ポイントを与えられる。でも、敵の精神力が120ポイントだから、攻撃の効果は敵の精神抵抗によって、130ー120=10ポイントのダメージしか通らない。それはつまり・・・」
「敵を倒すには、ファイアボール30発が必要というわけだな?」
「いいえ、カイン君の精神力は魔法を発動するたびに少しずつ減るので、多分途中で火力不足になり、与えダメージも0になり、一方的にやられるよ」
「くそ、今の俺じゃ太刀打ち出来ないというわけか」
「残念ながら・・・でも、わたしが協力すれば、勝てるかも知れないよ?わたしも一緒に戦うのはどうですか?」
「それは・・・」
俺は悩んだ。
今はくだらいメンツより、確実に勝つほうが大事だよな。そのためには、セーミスちゃんの力を借りるしかないのか。
いや、それはダメだ。つい先まで「俺は強くなる~」とか言い出して、結局彼女の力を頼るのはさすがダサすぎ。
別の方法を考えるんだ。
確か、やつは「活性化」という状態になってる、その状態によってステータス上昇中だよな。その状態を上手く崩せる方法はないのか?
いや、待ってよ、「オートカウンター」というスキルが抜け道なんじゃないか?射程内に入る動物を自動的に攻撃するのがやつの行動ルーチンだから、それを利用すれば、裏を取る事もできるはずだ!
よし、閃いたぞ!解決策を見出した!あとは実行のみ!
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