第8話―カモイなげし4―
恐ろしい体験があっても異なる世界を身を運ぼうとする。鬼川の視点でのアイテルは信頼性があるから家の前で待っていたのだろう。
どうにも不可解なことがある、どうして再び夢世界に行こうと思ったのか。
その目で耳で知ったはず、俺たちがいる次元と呼ぶべきか適切ではないのだろうが便宜的にこれを呼ぶとして似て非なる次元は、
尊重や法がない無秩序な世界。
日常や死という概念というものを取り除けば現実感が薄れ忘却して開放された深層心理にたどる答えは、ここはゲームのようなところと至る。
「もう特定されいるなら合流場所は、俺の家でいいか?庭とか門に待っていてやる。それで合流時間は、5分後。
もし一時間以内に現れなければ姿が見えても俺はイグジスタンス…現実に帰還する。それでいいか?」
「場所と時間の指定…大丈夫」
淡々とした表情で頷く。
「ここから注意喚起…絶対に往来がある場所で夢世界に行こうとするな!
故意じゃなく意識的に入った場合でも、すぐに現実に帰る。
これが約束するなら付き合う」
「うん、分かった」
らしくなく熱くなり乱暴な説明になってしまったが鬼川は表情を変えず首を縦に振って応える。身を守るための大事な注意事項であるが、どこか楽観を
しているようにも見える。
「じゃあ。荷物を家に片付けてから、お前が現れるまでは、のんびりと待っているからな」
顔の頬の高さまで手を挙げると、家に向かって進んで別れを告げる。
返事は返ってこなかったが喋るのが苦手である性格だと印象で気に留めるようなことなかった。ドアの前で足を止めるとカギを出そうとカバンの中を手を突っ込んで探していたら袖を引っ張られる感覚があった。いや感覚じゃなく実際に引っ張られている。
振り返れば…すぐ目の前に鬼川が立っていた。ち、近いなぁ随分と。
「な、なんだ?まだ何か用があるのか」
「用があると言えば、まだある。
…私も家に入る」
「そうか。好きにすればいいんじゃないか…いや、待って。どういうことだ!?」
何を言ったコイツは!?まさか家に入ろうと言うのか。好意を抱いているような素振りはないのが、どこか歪さを感じる。
「夢世界の行く手段が、ざっくりとしていて分からない。……経験者から見て貰い指導を受けた法が、成功する可能性が高まるし…移動する手間がない」
「どうにも言語化するのが難しい感覚なんだ…いや、そうじゃなく!
男の家に、どうして
どうにも話が見えない。言葉の意図を読もうとしたが裏が見えない表面上も分からない。友人以下も発展していない段階、鬼川とは夢世界と現実を合わせても2回ほどしか会っていない。
なのだが鬼川は鬼川で首を傾げている。どうやら俺が詰問しているのが不思議みたいだ。スゴイ、同じ年齢で学校に通っていて日本人なのに外国人とぎこちない会話をしているみたいだ。
「…なにか、おかしな事を言った?」
「逆にどうして思わないのか聞きたいぐらいになぁ。ともかく無闇に入ろうとするな。
恋人じゃないと入っていけない覚えておけよ」
「善処する」
これ善処しないパターンだな。危険意識が皆無さに俺は面倒を見ないといけないなと謎の使命感が湧いたので隅に追いやり玄関に入る。
…当たり前のように鬼川は入ってきた。
「………」
「………んっ?」
訝しげな反応をしている。無遠慮にパーソナルエリアを侵入しようとする対処方法の一つにある無言圧力を向けるが効果なし。
「どうしたのアイテル?」
「とりあえず出ていけ言う前に…現実ではアイテル呼ばないでほしいんだが」
「名前は聞いていない、アイテルじゃ駄目」
呟いたとも返事なのか判断しにくい。
独白にしては音量が小さな声より、やや落としていた声量。
だとすれば俺に向けて放った言葉だと思うことにしておこう。だとしたら疑問なのが、名前は聞いていない?
どういう意図で、どんな真意があったのか複数が浮かんで消えて消極的に残ったのを至ったのは、現実世界で、まだ名前を知らないからの愚痴。
そのあとに甘えにも捉えられる言葉のアイテルじゃ駄目は、俺が不満そうにしていたのが驚きの感情があった。
つ、疲れた…この短いセリフでここまで考えるとは。もしかするとコイツは友達が少ないのだろうなぁ。
「アイテルと呼ばれるのは違和感があるんだよ。夢世界で呼んでくれ。
俺が鬼川藍璃を知っているのも不公平だろうから名乗る。
おれの名は夢藤原孝和だ。上でも下でも好きな方を呼んでくれ」
「了解。…藤原くん」
「なんだ?」
「早く、行きたい!」
「…ハァー、じゃあ廊下の真ん中からドアを開けたらリビングに勝手に入ってくれ。
ソファーがあるから、そこに座ったまま夢世界に飛んくれ。
俺は2階から夢世界に向かう」
勝手に促すなと、怒りたいところだが普段はツッコミをしないから疲弊している。その辺は無視をして指示を出すと鬼川の方は異論なく首肯。するとリビングへと開けるとドアをくぐった。
その背を見送ってから俺は一気疲れを吐き出そうと盛大にため息を零した。
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