第7話―カモイなげし3―

無駄に元気な萩野を家に送り届け、そのまま帰ることにした。帰っても、やることは勉強や遊ぶことしかないが心に余裕があったら夢世界に行こうと思っている。

色々と考えながら家に着いた途端に俺は足を止めた。どうして…鬼川が家の前に立っている!?


(夢世界で彷徨っていた女の子…俺を待っている以外に目的はなさそうだよなぁ?)


どうして俺の住所を知っているのかという疑問の答えはすぐに解った。そもそも俺が鬼川に避難場所として案内したからだ。

とは、いえリアルと夢世界の俺を知らないはずだ。逆に俺の方は偶発的に発生され呼び出されたフォール、で何も知らない彼女は姿を変える方法は使用があるのも知らず、リアルの姿であの世界にいた。

この理屈から鬼川はリアルの俺がどんな容姿なのかさえ知らない。


(何もしなければ気づかない…通り過ぎる)


「こんばんは。少し…話をよろしいですか?」


門扉に足を踏み出したタイミングで後ろから尋ねられた。眠た気な目やマイベースな口調から知らない人から声を掛けないと読んだが読み間違いしたようだ。

そのまま無視して家に入ればいいが、それは無礼で個人的にもしたくない。

なので俺は初対面の人から声を掛けられたような反応で振り返る。


「えっ?話って、もしかして僕にですか」


俳優じゃないから演技は上手く出来るか自信がなかったが指を自分に向けて弱々しく言う。

門扉の前に右側に立つ鬼川は首肯する。


「うん。夢世界…知っています?」


単刀直入にもほどがあるだろう!?

こうなれば俺が取るアクションは呆気と取られて次に首を傾げてから返事になる。


「その夢世界が、どこにあるのか知りません。なんだか力になれず、すみません」


「気にしなくていい。…変なことをいた私の方こそ、すみませんでした」


まったく、そのとおりだよ。お礼に訪れに来たけど夢世界では俺の家とまで断定していいのか分からずにインターホンを押すか迷っていた。

そんなところだろう、見ていないけど。


「い、いえ!そんなことありませんよ。それじゃあ」


軽く会釈をして後ろを振り返って前足を上げる。


「アイテル…貴方の名前はアイテル・ドリーム・レインボーでは無いですか?」


「………」


驚きのあまり、振り上げた足が固まった。抑揚のない声が確信しているのか半信半疑であるのか分からん。つかめれない奴だ。

不審に思われず止まった足を地面に降ろしてから笑顔を作って振り返った。


「…ど、どうしたのですか?アイテム・ドリーム?言葉からしてゲームみたいなネーミングですけど?」


読めない。何を考えているんだ一体…

鬼川は首を横に振って優しく否定をする。


「ううん…アイテル・ドリーム・オーロラって口にするのも…恥ずかしい。

すごく、ダサい」


「なんだと!?どこがダサいのか詳しく聞かせてもらおうか。俺が考えた名前がダサいって傷ついたぞぉぉ!!」


「やっぱり、本人」


「あっ!キノセイダ」


「無理が、ある。アイテル」


「ッ――くっ!」


迂闊うかつたった。自分でも薄々そう思ってはいたが人から言われるとイライラする。見た目に反して、コイツは鋭い!この状況でアイテルとは別人など否定するには手遅れだ。

抑揚が乏しい相手というものに疑われると、これ以上にないほど厄介な相手になるものなのかよ。

もはや取りつくう理由がなくなり俺は盛大にため息をこぼして肩を竦める。


「そうだ。俺がアイテルだが見ての通り平凡な高校生だ。わざわざお礼に来るなんて立派なんだな」


これで馬脚ばきゃくを現したから夢世界で出会ったままの言動にしても鬼川は、とくに表情を変わらない。

いや、コイツの場合は、ただリアクションが苦手なんだろう。


「それも、ある。でも」


「…でも?」


変なところで言葉を止めるなよ!?どう答えればいいのか困るし先が気になってくる。

ぼんやりとしたマイベース、長く話すのが苦手と窺えられる。

言葉を紡ぐまで5秒ほど待った。

つかみにくい性格だと思ったが、ある程度の接し方が把握してきた。


「他の目的は…夢世界の行き方を教えてほしい。そこなら、飛べて魔法が使える」


「それなら祈るだけで、あの世界に飛び込めれるぞ。勝手に飛ばされるのはフォールのみだ」


「そう」


前後撤回だ。鬼川というマイベース美少女は、つかみにくい雰囲気だぞ。

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