第3話―夢を抱く者アイテル其の3―

ただ景色を眺めるだけなのは、つまらないと感情がそう主張したので俺は夜空を目的もなく飛んでいた。生まれてから住み慣れている浜松市、だけど間違いなく異質で恐れた別の浜松市。立ち並ぶ中で高い屋上の3メートルほど高く水平で飛んでいると正面から地上にキョロキョロと視線を巡らす人が視覚に偶然と捉えた。


(珍しいなぁ。こんな場所に同じ人がいるなんて…。もしかして夢世界には偶発的に飛ばされたのか?)


なんの因果関係があるのか無いのか検討もつかないが、こうやって現実世界から架空な世界に前触れもなく召喚される現象がある。

それも不親切に、違和感が顕著じゃなく後ろに気配を感じる程度の曖昧な違和感を。人が少ないとはいえ一方的に知らずに招かれた

人を発見したら説明する義務はない。


(だけど右も左も分からない人を無視するのも悪いし。気乗りしないけど夢世界のことを。ルールはなくてもモラル的には説明する義務はあるみたいだ)


迷い人は交差点にいるので目撃されなように気をつけて俺は視界に入らないよう近くの狭い通路に着地する。

どうして、そんな回りくどいことをするのかは単純に空から人が降りれば混乱するからだと配慮しての事だった。では現実世界とは違うことを説明に向かうとするか。

曲がり角まで進んで曲がろうと思ったけど、もしかしたら俺と同じ人が近くで見つけて声を掛けて助けたかもしれない。そんな可能性は低いと分かっていながらも過剰な不安が拭えない。もし俺が現れたとする、今から現れても出番がないのに出てきても困るんだけどと気まずい空気は作りたくない。

誰も得しないことはマイナスしかない。

そんな思いをしなくないので壁から交差点を覗くとしよう。


(後ろ姿からして美少女だな。余計に声が掛けにくい。…あっちの空から飛んでくる人がいるなぁ。

それも複数で)


車やバイクが一つも走らない交差点で慣れた様子で地面に着地すると茶髪のさわやかなイケメンが美少女を上から下と無遠慮、まるで品定めでもするかのように見ている。


(あれって…恐ろしいことをしようと考えている奴の表情じゃないか!?手遅れになる前に助けないと)


俺は音を立てずに地面を蹴り浮遊する。顕現された肉体に宿るエネルギーを消費して俺は武器を呼び出す。青い大剣を、そして低空飛行で一気に接近をしようと動く。


「おいおい、そう怯えなくて――」


男の手が彼女を尊厳を脅かそうとして手を伸ばす。それを見た俺は平然と下卑に笑ってられて非道な行いをする輩に、容赦をかける必要はないと俺の中で強く主張した。

飛行速度を最大加速まで上げて、俺は大剣でその男の胴体を斬った。

エネルギーから武器へと変える創造の剣は切れ味は鋭く無法者の男には胴体が切断されると流れるのは血、ではなく小さな粒が大津波のように押し流れていき夢世界にいられる活動エネルギーを激しく消費したと思ったらすぐに消滅した。


「こんな場所で狼藉か?」


大剣を担いで相手を睨むと4人全員が何が起きたのか分からないと硬直していた。これは衝撃がある出来事に直面すると理解するまで処理に時間を要するみたいだ。


「おい、大丈夫か?」


「…えっ?あ、はい」


まぁ何がなんなのか状況についてこられないのは、この中では名前を知らない美少女がそうなのだろうけど。


「後ろに!ここは危険だから少し距離を取るように。もし俺が駆けつけない距離や場所から離れるのはお勧めはしない。他の人に襲撃があれば助けらる自信は無い」


「わ、分かりました」


彼女からすれば俺も同様にナンパ野郎だと思われていていないか思ったが然程そうならなかった。

ミディアムヘアが似合う女の子は言葉に頷いて俺を信じ後ろへと退いた。


「……な、なんだよアイツ。いきなり人を斬って!常識がねぇのかよ」


情報処理が終えたのか硬直から先に解いた男が人差し指を顔に向けて批判めいた言葉に俺は何を言っているのか呆れて口から嘆息がこぼれる。


「はぁー…常識を語るなら初めて来るんだ。世界を彷徨っている相手に馴れ馴れしく肩を触れようとするのがか、あんたの常識ではそれが常識なのか?」


さて、ここまですれば襲ってくるような暴挙には出ないだろう。これが虚構の中では逆ギレして襲ってくる風潮があるがリアルでは滅多に起きない。俺が横から救ったのは、ある意味で正当防衛を行使。敵視と警戒を緩めずに向けられる相手とは不愉快なもので四人の男たちは女の子を襲うため理由が色欲の他には、きっと無いのだろう。


「ちっ、なめやがって…おい!コイツを痛い目に遭わせようぜぇ!!」


「ぎゃはははは、それ賛成!」


随分と好き勝手に口をする 反社会的勢力。立ち直ると、もう勝ったみたいな余裕が与えるのは単純に4人だと思われる。


「…余裕綽々の証、この夢世界が皆に同じステータスだからか」


「えっ――!?」


俺の独りでの言葉を聞こえた後ろに戦況を見守る彼女は驚きと疑問が半分となる声が滲んでいた。

ただでさえ不安で怖い、その子には詳しい説明なんてすれば絶望する。俺は肩越しで振り返り、少しは安堵感を持たせるように。


「はは、何もない。安心してくれ必ず俺はあなたを守ってみせるよ」


「お、お願いします」


とは言ったものの勝算は厳しい。

ここにはステータスという意味での同じなのは最初のスタートラインが同じステータスという意味である。その最初ステータスがレベルアップやスキルの取得など条件を満たすことが無い。結論をつけると初期ステータスは、これ以上は強くなれず徹頭徹尾このままだ。


(初期ステータスの変化なしだから、どうしても他の人よりも圧倒的な力は手に入れない…

その仕組みを奴らは知っている)


一応システム外スキルという某有名な作品の用語を借りるなら…

本人の操作技術が必要。尚且その戦術を立てて優位な戦いを主導権を握るぐらい。ああぁー!夢世界は気に入ってはいるんだけど異世界みたいに強くなれないのが唯一の不満の一つなんだよなぁ。

…もう奇襲という手札は切った。正面の相手は得物を作り出す。個々がもっとも得意な武器にして。最初に驚愕から立ち直った男の武器は二刀流、ギャハハハとリアルで初めて聞いた哄笑する男は直剣。後ろに立つ二人は大剣と直剣を…やっぱり多くある武器の中から選ぶのは剣。普遍的な人気だな。


「ここで俺が切れる手札はこれだ」


俺は顕現させた青き大剣ブルーカリバー(命名は俺)を捨てると粒子となって霧散して消える。

そして右手と左手に新たなる武器を生産する。その武器はメジャーな剣とは程遠くマイナーな武器。


「ギャハハハ!なんだよ、あのヘナチョコな武器はよ。くさりがま……ダセえ」


おい、うるさいぞ時代錯誤な男。

俺が大剣を捨てて呼び出した武器は鎖鎌くさりがま。あまりにもマイナーで主人公なら絶対には選び出さない武器である。


「おいおい、それで勝てるのか?」


この中でメンタルが強そうな男は鎖鎌を見てから態度が著しく大きくなって見下してきた。この反応には常々と思うのは辟易させられる。


「別に舐めていない。この鎖鎌であんたたち四人まとめて…

倒してやるよ!」


これ以上は鎖鎌の悪口しか無さそうなので俺は距離を詰めようと前へと掛ける。奇襲とは違って今度は得物を構える姿勢。けど、それは俺が読んだ行動であった。鎖鎌の特徴である振り回して攻撃態勢。


「…カマじゃなくて鎖のほう?」


多くの人が誤解しがちだが鎖鎌は振り回すのは鎌ではなく鎖だ。鎌の柄に下に接続している鎖分銅くさりふんどうが主な攻防として用途になる。鎌はトドメを刺すときだけ。


「棒立ちしているだけなら狙いやすい!いけえぇ」


「なっ!?俺の武器が」


まずはメンタル強いを狙う。剣を鎖で絡め取るとエネルギー補給を失った同時に、吸収して武器を消滅させる。


「だが、まだ一つはある!」


絡め取ったのは二刀のうち一刀。

もう片方で鎖を斬ろうとして袈裟斬りで攻撃するが、刀は弾き返されてる。鎖の頑丈さに目を見開いている隙に俺は鎖を右に旋回させて相手の左から側頭部に打撃を加える。

一回転の攻撃に相手は白目を剥いて身体中から粒子となって消滅。


「……な、なんだよ。滅茶苦茶じゃねぇか。離れろ!コイツ強いぞ」


ギャハハハ君よ。それは悪手という戦術だよ。きっと3人で遠距離から仕留めるのだろう。案の定、俺から離れた3人は片手を前にして魔法を放とうとする。もちろん無詠唱でだ。


「数が上なんだ。武器での戦いはやめて魔法連発のジリ貧でいくぞ!」


炎、水、雷と見事にそれぞれ別々の魔法で同時に放ってきた。どれも規模的には上級魔法レベルで奔流の魔法はすぐ迫り来る。


「残念だが、この鎖鎌には魔法迎撃は強いんだよ」


鎖を回収して今度は鎌を振り回し、迫る魔法を横から切り払い無へと還す。


「「「ッ――!?」」」


「今度は俺が魔法を仕掛ける番だ」


まずは範囲攻撃が強い炎魔法で放つ。3人は魔法を余計として散開なり陣形は崩れる。そして回避軌道から避けるだろう場所に前もって雷魔法を放っていた。着地してから目の前に雷魔法が襲ってくるのを気づいて武器で防御しようとするが遅かった。


「「ぐわああぁぁーー!?」」


頭を貫かれて二人は泥人形のように倒れて身体から粒子となって空に流れ霧散する。最後の一人は虚構な哄笑する男だけだ。


「クソ!なんだよアレは!?鎖鎌にやられるなんて何の冗談なんだよ」


男は勝負を捨てたのか地面に何度も何度も拳を殴っていた。もはや抵抗する意思はないようだ。俺は鎖鎌の攻撃範囲まで迫って鎖を上空に放って、そのまま落下。


「これで終わりだ」


威力を増しての鎖分銅の端にある部位で頭上に振り下ろしてトドメの一撃を決めるのであった。

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