第2話―夢を抱く者アイテル其の2―

私は、まず目を覚まして飛び込むのは見慣れた天井。上半身を起こし遅れて違和感に気づいた。


(…なんだろう。眠気が消えている)


良質な睡眠を取っているなら説明がつくけど、眠りにつく前に私はスマホのブルーライトを浴びていて、良質のある睡眠が取れるわけがない。それに睡眠時間だって、すこぶる短いのはカーテンが閉まる隙間すきまから差し込む仄かな光を見れば分かる。


(…深く考えても仕方ない。浅い睡眠でも目覚めがいい日がある)


感じた事が事実なので、それ以上は考えずに私は部屋を出て洗面所に向かう。

ニキビ改善できる洗顔クリームを使い顔を洗い髪をくしで梳かす。整えてからリビングに入って朝食を摂る。献立は調理が億劫な私はヨーグルトとバナナ、牛乳だけで済ませる。


「夜遅く寝たのに不思議と目が…冴えている。二度寝するのもアレだし」


睡眠時間は2時間しか取っていない。隅に追いやった疑問がふと気になりなって考察するけど思い当たる要因が見つからない。

壁時計の針が示すのは午前5時…本当に早く起きてしまった。


「…散歩でもしよう」


気分転換に私は寝間着のまま散歩することに…やっぱり着替えてかは外に出よう。着替えの手間が考慮した結果、学校の制服で出ることにした。わざわざジョギングウェア、私服に着ても帰ったら着替えないといけないし、これがベスト。


(もう一度、顔を洗っておこう)


洗面所に入り顔を洗う。鏡に映る自分の姿を見て無表情だなと思う。


(肩に掛かる黒髪。

目は、気怠げか無気力で)


広角を上げる。対面に映る自分の拙い笑みに、これは酷いなぁと苦笑するが映るのは乾いた笑み…

笑顔を作るのは難しい。


「もう少し明るくなれば可愛い女の子になれるはず…」


そう言い聞かせて私は玄関に向かう。お気に入りのスニーカーを履いて外に出て目的もなく浜松市の住宅街の道を歩く。


「……誰もいない?」


いくら旭日昇天きょくじつしょうてんとはいえ家が並び立っている場所で歩く人がいないのは、ともかく車や動物がいないのは普通に考えなくともおかしい。


(この時間帯ならハトやカラスがけたたましく鳴くのに一切そんな声が聞こえない。何が起きているの)


世界で唯一の人類になった孤独感に襲われる。気づいたら私だけ生き残って…まずい悪い想像が尽きない。


「…まずは……交差点に行けば。

そこなら車ぐらい走っている」


この不自然な光景を否定する私以外の生命体がいないか確認したく交差点のある方向へ進む。移動の間に私以外の生命体が見かけず、

その交差点に到着しても動く物体はいなかった。


「………なに、どうして?」


こんな奇妙な光景があるのだろうか。国道を走る車やバイク一つもなく歩道には犬もネコさえもいない。


(確定だ。何か起きた…私だけが生き残ったのか世界の均衡が壊れたのか)


なぜか動く信号機を黄色から青になるのを見ながら妄想に近い考察をする。


「おいおい、見ろよ。こんな場所で可愛い女の子が棒立ちしているぞ」


上から軽率な声音と言葉に見上げたら空を移動する人がいた。


「えっ?」


そう、空を飛んでいる。超能力者かな?泳ぐように空中を移動する集団は私を囲むように降りて立つ。


「よっ、と。へへ、胸は小さいが。これは…なかなか」


面識のないのに下から上に舐めるような視線あまり失礼な行為に恐怖が襲った。その人は長身痩躯で綺麗に整えた栗色の髪型に凛々しい瞳。さわやかなモデルごとく容貌…なのだけど醜悪な心が顔や態度に表れていて一種の怪物を彷彿させる。


「な、なに!…」


「おいおい、そう怯えなくて――」


私の肩に触れようと右手を上げて近寄ろうとして…

その男が最後まで言葉を発せず、その先を喋ることは永久に失う。

胴体の真ん中が横に切れ目が走り

分裂。これが誰かの手によって斬られたのだと理解するまで――


「こんな場所で狼藉か?」


ナンパしてきた男達に向かって声。

その人は大剣を肩に担ぎ危ないところで助けてくれた。

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