第6話 試練の時!!
「"不幸の種"から蕾が出ましたね」
「え!?」
式神巫女が俺の頭の天辺を見ながら呟いたので、そこに手を当ててみると、ツムジ辺りから突起物が生えていた。
「ええーーー!?何これヤバくない!?俺の頭どうなっちゃったの!?」
「頭大丈夫ですか?」
「言い方ーーー!!言葉は選べって言ってるだろう!!そろそろ学ぼう!?いやでも、マジ俺の頭どうしようコレ?!どうなっちゃうのコレ?!」
わしゃわしゃ頭をさする俺を見て、式神巫女が淡々と答える。
「落ち着いてください。貴方の頭がどうなろうと世の中は変わりませんから」
「言い方ーーー!!ほんとマジ何なのこの無礼者?!失礼!マジ失礼!!…くっ、抜けなイタタタただただ」
頑張って蕾を引っこ抜こうとするも、頭皮ごと引っ張られ、激痛が走るだけだった。思わず涙目になる。
「それは花開くまで抜けませんよ」
「ええー?!旗坊ならぬ花坊!?頭に花咲いてるとか、うわっ、バカじゃん!!俺メッチャ恥ずかしい奴じゃん!!」
「今までと何が違うんですか?」
「俺の何を知ってるの?!」
「永遠の厨二病」
「知ってた!!俺のこと知ってた!!!何で?!実は俺のストーカーなの?!怖っ!マジ怖っ!」
まぁ、幼なじみである神楽明めいから何かしら聞いているのだろう。
「馬鹿なんですね」
「いきなり肯定した!!失敬だなお前!ホント失敬だな!つか、言葉は選べって何度言えば分かるんだお前の頭は!」
「…お馬鹿さんなんですね」
「そーいうことじゃないだろう?!お馬鹿さんなんですね!」
「不幸に塗れて死ねばいい」
「なんてこと言うんだぁー!シャレにならないからヤメロ!」
こちとらマジ物の不幸の種を頭に植え付けられてるんだ!マジでシャレにならない!!
「花開いたとき、不幸が訪れます。その時が試練の時です。人間の試練とは不幸に遭うことですから。なので、そのまま心置きなくお逝き下さい。その方が世の中の為でもありますから。因みにその花はとある花によく似ているのですがーー」
「勝手に殺すな!勝手に決めつけるな!俺は絶対乗り越えてみせる!!そんでご褒美貰う!!俺の願い事も叶えて貰う!!!」
俺の異世界行きに協力して貰う!!!
「願いを叶える神様ではないのですが。残念な頭で残念です。ホントいろいろ残念で残念です。まさにその花言葉通りです」
式神巫女が、やれやれといった風に、ため息混じりに首を横に振る。
「お前、いい加減にーー」
「何にせよ、花が開いたらすぐに抜いてしまうがいいでしょう。また新たな種が撒かれ、芽吹く前に」
まぁ、確かにそうなんだが、、、
「でも自分じゃ頭の天辺見れないし、ちょこちょこ鏡見るのもナルシストっぽくて嫌だなぁ。あ、でも周りに人が居れば教えてもらえるか。あ、でも頭に花咲いてんの見られんのも嫌だなぁ。」
「毎日咲いてる様なものなので誰も気にしませんよ」
本日三度目のコノヤロウだ!
仏の顔も3度までなんだぞ!!
しかし俺は仏様じゃないから我慢も限界だ!
「よし、ちょっとそこに直れ!」
「あ、因みに霊力がある人にしか見えませんよ」
「あ、そうなの?ならいっか。それはそうと、そのまま動くなよ!」
俺はデコピンの構えをとる。
ただのデコピンではない。
俺のデコピンはピストル並みの衝撃を与える、つまり即死級の指弾だ!ふはははは(厨二病健在中)
ー※決して某漫画の技のパクリではない。あしからず。ー
式神なので死ぬ事は無いだろうから、思いっきり喰らわしてやる!!
「まぁ、貴方は先程の貧乏神様に気に入られた様なので大丈夫でしょう」
「あ、そうなの?貧乏神様に気に入られるのも複雑だな」
と、中指に霊力を込めた瞬間、いつの間にやら目の前に居た式神巫女に、まぁ精々頑張ってくださいね、と額をドスッと突かれた。
「痛あぁぁぁぁ!!!」
即死級の指弾を受けた!!
ーこの日初めて、真っ白な世界が存在する事を知る。ー
「イタタ…た、た?!うおっ、え、ちょっ、うわぁっ」
気がつくと、俺の身体は何かに引っ張られる様に鳥居の外に向かって進んでいた。よく見ると、数メートル先に鳥の様な式神が飛んでいた。鳥居を出ると、鳥の様な式神は、俺の家の方に向かって飛んで行く。それに引っ張られる様に俺の身体も進んで行く。抵抗して足を止めようとするも凄い力で引っ張られていて引きずられるだけなので、足を止められず、引っ張られるまま進むしかない。
「ちきしょう、油断したぁ〜!」
鳥の様な式神に攻撃を当てようにも、ひょいひょい避けられ、ひょいひょい避けられる度に身体もひょいひょい揺れるから気持ち悪くなる。
糸や紐の様に引っ張られてるなら切ればいいだけなのだが、流石にブラックホールに引き込まれているような力が作用していてはどうすればいいのか分からないので為す術無しである。
そうこうしているうちに家に着いてしまった。いつの間にか鳥の様な式神の姿も消えていた。
「くっそぉー。…ただいまぁ〜」
「くぅおぉら、善!!何処に行って…なんじゃその頭は」
「なんか、貧乏神様に試練を与えるとか言って不幸の種を植え付けられた」
「……神楽家の神社に行ったのか。…修行もせんと、神の御前に立とうとするからそうなる。その傲慢さと日頃の怠惰を反省し、心を入れ替え、日々精進するがよい。そもそもお前は仏様ーー」
親父の説法が始まりそうだったので、話を逸らす。
「…コレ、何とかならん?」
「…何ともならん。相手は神故、どうにもならん。試練と言うたのなら、それを越えるしかあるまい。…まぁ、お前は神の御標みしるしの気を纏っているから、そう悪い様にもならんだろうが…」
「えっ」
「その御標を留めておける様に額に印までついとる。まぁ、印をつけたのは別の者だろうが。かなりの腕の者だな」
「!」
『ま、そんな訳だから精々頑張って』
『まぁ、貴方は先程の貧乏神様に気に入られた様なので大丈夫でしょう』
『まぁ精々頑張ってくださいね』
「…そっか、うん!俺、頑張るよ!」
「うむ。しかし、油断はするなよ」
「おう!…まぁ、仕返しはやめておいてやるか…だがあの鳥の様な式神は後で絶対消滅させる!」
俺は硬く心に誓った。
「…法力も使えんクセによく言うわ。一条家の鳥の式神といえば八咫烏じゃ。今のお前じゃどうにもならんわ。それはそうと、サボった罰として、お前はこれから倉掃除だ!」
「え、何そのいかにもなフラグ!!そんなの絶対、ヤバイ壺割っちゃったり、何か開けちゃいけない箱とか扉とか開いちゃうパターンじゃん!!そんで、俺呪われちゃうパターンじゃん!!」
「経典や経文、写経の整理じゃ」
「そんなの絶対ヤバイ巻き物見つかって、巻き物の封印が解けて呪われちゃうパターンじゃん!!」
「頑張ると言ったのは口だけか!…仕方ない、仏像磨きーー
「仏像壊しちゃって罰当たられちゃうパターンじゃん!!」
「本堂の掃除でもしとれえぇい!!!」
ウチの魔王再び降臨。今の顔は阿修羅像にだって負けない。
このまま何もせず、寝ちゃえばいんじゃね?そのまま健やかな朝を迎えちゃえばいんじゃね?とも思ったのだが、問題を先延ばしにするだけで何も解決しないと悟る。
「…しっかし、試練て何なんだろうなぁ〜…はぁ…」
本堂に向かう途中、ものっっっすごい悪臭が漂った。
「臭っっっさ!!!おエェッ!!」
トイレに向かう途中に洗面台の鏡を見て驚愕した。
頭にラフレシアみたいな花?が咲いていた!!
「うわぁぁぁぁぁ!!」
俺はビックリのあまり、ラフレシアを毟り取った!!
ブチブチブチ
寄生根?みないなのも毟り取れ、その後消滅した。
「消え、、た?」
『花が開いたらすぐに抜いてしまうがいいでしょう。また新たな種が撒かれ、芽吹く前に』
「…根っこごと消えたから大丈夫、、かな?」
気づけば臭いも消えている。
「…しっかし、ラフレシアかぁ〜(苦笑)」
『まさにその花言葉通りです』
「………」
スマホで検索。ラフレシアの花言葉。
ーーー 夢現ゆめうつつ ーーー
夢と現実の区別のつかない状態のこと
「……あの式神め」
『花開いたとき、不幸が訪れます。その時が試練の時です。人間の試練とは不幸に遭うことですから。』
「…じゃぁ、これから、何か不幸な試練の始まりってことか……?」
俺が身構えたその時、
「あ、善さん!」
「!」
…あぁ、、すごい嫌な予感がする。
心臓を鷲掴みにされたような、すごく嫌な感覚。
俺のこういう時の勘は外れない。
試練の時が来たのだと直感した。
ウチの寺の僧侶の1人である木下さん(春徳しゅんとくさん)が変な木の棒を持っている。
…あぁ、、すごい嫌な予感がする。
たまに人形やら鏡やら曰く付きの物やらをウチに持って来る檀家さんやらが居るが、そんなの比じゃないくらいアレは厄介な物だと確信する。
「丁度今ご住職にご相談しようとしていたところだったんですよ。倉を整理していたら、今まで見た事のなかった扉が突然開き、その中にあった壺の中の一つがいきなり割れて、中から巻物が出てきまして…、その巻物の紐がプツリと切れて巻物が広がり、読めない文字と印が描いてある部分から、この何かを刻まれた人型の様な木の棒が出て来まして…。巻物は此方です。壺には何かの札が貼ってあった様なのですが…」
はいキタ!ほらキタ!フラグ全部キタ!!
倉に扉に壺に札と巻物と変な木の仏像っぽい呪いアイテムみたいなのとか物の見事に全部キタ!!!
「木の棒は燃やしてしまえ!何か良くないモノを感じるから!!」
「火による浄化ですか…なるほど。ご住職にも相談して来ます」
そしてすぐに、寺の敷地内にある護摩焚きのスペースを使って、キャンプファイヤー並みの炎の中に木の棒を放り、3人で読経し、浄化を試みた。
しかし、木の棒は燃えなかった。
ますます怪しい。てかもう怪しさしかない。
「うわ怖っ。マジで何なんだろうアレ。絶対関わりたくない」
「うむ…この経で鎮まらぬという事は、この世やあの世の人魂モノではないのだろう。神がかった何かか、鬼や妖怪変化の類か、あるいは…」
「対処できないのなら、封じるしかないのですが、壺に貼ってあった元の札は、壺が粉々に割れた時に一緒に破けてしまったので、字や印を再現するのは難しいでしょう」
「うむ…ウチも今『封魔の力』を持つ者はおらんしのぉ。ワシの『破魔の力』の法力も効かないとなると、本山か宮家の神社に頼みに行くほかあるまい。せめて『従魔の力』を持つ者が居ればよかったのだが…」
"魔"に対する力は7つあるらしい。俺は修行僧(見習い研修中)に成り立てのペーペーだから詳しい事が分からんので後で聞いてみよう。少し厨二病が擽られたから。
そして、木の棒に近づいてみる。ちょっとは燃えたのだろう。一部がコゲになって、字の様なモノが刻まれた一部が少しだけ崩れていた。
「……何か嫌な予感が…」
と言うと同時に、木の棒はピシッと音を立てて割れた。
「「「 !! 」」」
木の棒から何か良くない霧状のモノが溢れ出してきたので、3人同時に後ろに飛び退いた。
親父は何か呟きながら破魔札を放ったので、俺も真似して破魔札を放ってみた。破魔札は霧状の中へと消えていった。
効いたのか効かなかったのかは分からない。
木の棒から溢れ出してきた霧が段々と薄れてきた頃、其処には長身で黒髪のイケメンが立っていた。
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