第5話 神様?降臨!!

そこには世紀末に出てくるようなボロボロのフード付きマント(外套)を見に纏った神様?が立っていた。


腰までの髪のシルエットの正体は外套のシルエットだったらしい。



「か、神様ですか!?あの、俺!実は異世ーー


初めての神様降臨に興奮気味だった為、勢い余って足が一歩前に出て躓き、前のめりにコケそうになったので、慌てて近くにあるものを掴んだ。


そう、皆様の予想通り、神様?の外套を掴んでしまった。


ビリィィイ


そして、皆様の予想通り、ボロボロだった外套は当然勢いを受け止められず、その勢いのまま破れていき、俺共々下に崩れていった。



「イタタた……た…」



視線を少し上に上げると、そこには生足があった。

視界に入ったのは太ももまでの生足。


みなさま、もうお分かりだろうか。


目の前に居るのは神様。その神様の外套が破けてしまい、生足を拝見するという結果に至ったということは、この生足は当然神様?のものだということは言うまでもなく、外套が破けて生足が出てきたということは…外套の下の下半身は


①パン一

②フンドシ

③何も履いてない


という三択になる、、、。しかし正解など確認したくもない。そもそも怖くて顔を上げられない、、、。


ホットパンツという新たな可能性も浮上したが、そもそも神様?なので、スペアくらいーー


「…僕の一丁羅……」


持ってなかったーーー!!!なぜ神様?のくせにスペアとか予備の服とか持っていないのか?!

いやでも神様?なので、神力だか魔法やらでパパッと新しいお召し物に着替えるとかーー


「…これからどうしよう…」


出来なかったーーー!!!なぜ神様?のくせにそういう力がないのか?!


「…神様のくせにとか言うな。あと、神様の後ろに?つけるな。」


心読まれてたーーー!!!何で人の心は読めるのに服は創造できないの?!あ、まぁ創造出来てたらそもそもボロボロの外套なんて着てないか。いや、そもそも何で外套の下生足なの!?変態なの?!変質者なの?!神様じゃないの?!


「…うるさい。君、ほんとうるさい。あと、失礼。ほんと失礼」

「ええー?!いや、でも、すいませんでしーー


神様の目を見て謝ろうと顔を上げたら、


ひし形の腹掛けにフンドシという金太郎みたいな姿に釘付けになった。


「……………」


…ああ、服(?)は来てたんだ良かった、とか、じゃぁ、正解は②だったってことか、とか、いや待て、何で金太郎!?、とか、一気に思考が駆け巡っていた。


その時、ひし型の腹掛けに"貧"と書かれていることに気付いた。


…貧と結びつく神様など、1柱しか思い浮かばない…。



「…あ、あの、もしかして、、、貧乏神様ですか?」


恐る恐る聞く俺に


「…そうだよ」


と淡々と答える貧乏神様。


ええーーー?!何でよりによって貧乏神様ーーー?!

あ、でも、そっか。だからボロボロの外套一丁羅しか持ってないのか。服も創造できないのも納得がいく。


「…君は本当に無礼者だね」


フードは破れていなく、目深に被ったままだから表情は見えないが、声からは呆れの様なものを感じる。



「……君に試練を与えよう」

「え!?怒っちゃったんですか?!すいません!謝りますから!!服も新しいもの買ってきますから!!!」


その時の俺はもぅ土下座しそうなくらい必死だった。


「…君は何か勘違いをしているね。怒ったから試練を与えるわけではないし、そもそもこんな事くらいでは怒らないよ。…まぁ服は欲しいけど。君に破かれちゃったし」


え、じゃぁ、何で試練を…?と思ったことを察したのだろう。それに答えてくれた。


「…僕が貧乏神だからさ。貧乏神は人に試練を与える。試練を乗り越えた者には福を与える。君の世界でも貧乏神は福の神と表裏一体とされていて、試練を乗り越えたとき、福の神へと転じると言われてるだろう?つまり、大変な試練を与えるけど、それを乗り越えたときのご褒美の見返りも大きいものを与える、それが僕。」



……なるほど。言いたい事は分かった。


……でも、


「何で俺?」

「…君が呼び出したんじゃないか」


え、


「何で来たの?」

「失敬だな君は。本当に失敬だな」


「………」

ここまで静観を決め込んでいた式神巫女だったが、俺と貧乏神様のやりとりを見かねたのだろう。式神が貧乏神様に話しかける許可を貰ったのち説明する許可も得て説明に入った。神様と式神の格差を垣間見た。なるほど、俺が無礼者と呼ばれるのも納得だ。神様と人間の間にも本来なら礼儀や格差があるのだろう。……まぁ、いいだろう。うん。今更だし。



「このお社は、いわゆる玄関口。お呼びできる神様は、訪問者の徳や霊力、神力、法力、などにより違ってきます。そもそも霊力が高くなければ、お呼びすることも出来ません。霊力、神力、法力、徳、これらが高ければ高いほど高位の神様をお呼びすることが出来ます。また、お呼びした神様と呼び出した訪問者の積み重ねてきた徳によって、潜在能力を向上させて頂けたり、運命を切り開く助言を頂けたり、縁を結んで頂けたりなど様々です」



ちなみに俺は、霊力は高い。いちを仏様の教えに基づいた修行を行なっている修行僧(見習い研修生)だから法力はあるけど、サボり気味だから低い。神様や神社に関する神力は何もしてこなかったので無い。


徳は気品、意志、温情、理性、忠誠、勇気、名誉、誠実、自信、謙虚、健康、などの人間性を構成する多様な精神要素や普段の行いから成り立っており、俺は自分の向上のために努力してきたものの徳はあるが、他人の為にしてきたものの徳は無い。


これらを総合した結果、俺が呼び出せるのは貧乏神様だったと。

えぇぇー納得いかない。今まで頑張ってきたのに試練て…何の追い討ちですか?!



「…頑張ってきたからこその試練。その努力のご褒美は君の身体に武術として既に身についているから、それ以上の褒美を貰える為のチャンスだと思えばいいよ。試練を乗り越えた時、君は二回り以上も大きく成長するだろう。勿論、得られるものも、かけがえのない大きなものとなる。そして、君なら乗り越えられると思ってる。

 だから僕は無闇矢鱈に試練を与えるわけではなく、試練を乗り越えられる可能性があるから与えるってこと。僕だって福の神になりたいからね。中には人間が苦悩したり破滅したりする姿見たさに試練を与えるのが大好きな貧乏神もいるけどね」

「えぇー…」

「…まぁ、そういう神に当たるのは徳の低い者とかバチの当たった者かな。悪徳のある者は疫病神とかが当たる時もあるね」

「怖っ…」

「…君は僕で良かったね」

「………(良かっ…たのか??)」

「…ホント何なのこの不行儀者」


ま、そんな訳だから精々頑張ってと、ツムジをブスッと突かれた。


「痛ぁぁぁ!!!」


「…試練を受けし挑戦者よ、試練を超えし賢者となれ」


この時、あまりの痛みに絶叫していた俺は、貧乏神様の言葉が聞き取れなかったが、式神巫女が驚いた顔をしていた。


そして、じゃぁね、と光の中に消えて行く貧乏神様を見た時、フードから優しげに微笑む口元が見えた。



しかし、後ろを向いた時、背中もケツも丸出しの姿が見えた。



「……………」



…まぁ、きっと良い神様なんだろうと思っていたら、紙切れが落ちているのに気付いた。



「?」




ーーー外套の弁償よろしく!社の中に入れといてね

   ついでに靴とか服とか一式揃えてくれると嬉しい

      神様には尽くしといた方がいいよぉ〜 ーーー




抜け目ない。そして遠回しとはいえ、たかってるあたりもさすが貧乏神。もしかしたら、俺がコケた時も、あえて俺を受け止めず、そのまま外套を破かせてこうして服を弁償させ貢がせる計算だったのかもしれない…。貧乏神…恐ろしい神こ。


といってもバイトしてる訳じゃないからお小遣いも微々たるものだしなぁ〜。……カッパでいいだろう。何気に暖かいし雨風凌げるし、おお!我ながらナイスアイディアだ!!


透明だと金太郎ファッションが悪目立ちしちゃうから黒のロングカッパにしてあげよう。今ならなんと!ゴム長靴もつけちゃう!!…これで、服一式揃ったことになるよな。よし。


後で届けに来よう。100均のカッパなのは内緒にしておく。

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