第2話 今日も元気に瞑想(迷走)中!!

本堂に読経と木魚、鐘の音が鳴り響く。



ポク、ポク、ポク、チーン……




「……………」




……ラノベやアニメ、マンガなどでよく聞く


今流行りの異世界転生や異世界召喚……。




……されたい。



俺もされたい!!


すっごいされたい!!!


剣や魔法を使いたい!チートスキルで無双したい!



スキルや技だって既に考案済みだ!俺の頭と心はいつだって、いつまでだって少年(厨二)のままだ!




ーー玄龍寺の跡取り息子、九条信善く《くじょうのぶよし》(16歳)は、今日も元気に厨二病を発症していたのであったーー




ウチの寺は戒律が無いので、髪型も自由だし、好きな物も食べられるし、結婚も出来る。経も、死後の極楽浄土へ向けて云々と言うよりは、仏様の声を聞き、仏様を信じ、仏様の教えに習い、実行していけば願いは叶う、というようなものである。


俺はその寺の跡取りということで、幼い頃から仏道の教えや寺のお勤め、作務の手伝いなど、いろいろ修行させられてきた。


中学卒業後には坊さん専門の学校に入れられた…


が、はっきり言って俺は坊さんの仕事に興味も関心も持てないままでいた。


いや、だって!


いくら戒律が無いとは言え、朝の4時くらいから起きて…



御堂や廊下・階段の掃除(しかもキッチリ雑巾掛け)して、


坐禅して、


読経して、


飯食って、


玄関・庭の掃除して、


講義受けて、


坐禅して、


読経して、


飯食って、


講義受けて


坐禅して、


読経して、


飯食って、


坐禅して、


写経して、


説法聞いて、、、



無理ーーー!!俺には無ーーー理ーーー!!!



俺は坊さん向いてない!!世の中のお坊様方尊敬します!!

スゴイです!!俺には出来ません!!


え、こんな生活何が楽しいの!?とか思っちゃうごめんなさい!!


いや、こんな生活せずとも叶えたければ普通に努力すればいんじゃね?とか考えちゃうすいません!!


そーゆー事じゃないのは分かってるんだけど、分かってはいるんだけれども!どーーーしても頭に浮かんできちゃう申し訳ございません!!!


俺は普通にごろごろダラダラずっと寝て過ごしたり、一日中ゲームに没頭したり、放課後駄弁りながらみんなでワチャワチャ遊びに行ったり飯食い行ったり、一般の男子校生煩欲生活をエンジョイしたい!!!


しかし、このままではその(俺にとっては)苦行の人生になってしまうので、他の人生を模索中なのだ。そんな中、異世界への道を盲進してしまうのも仕方がないのだとご容赦いただきたい。



ってことで、俺も異世界召喚されたい!(振り出しに戻る)



錬金術でいろいろ生成してみたい!!



獣人族の獣耳や尻尾を触ってみたい!モフモフしてみたい!



エルフやドワーフと交流したい!



精霊と仲良くなりたい!



魔獣と従魔契約したい!



あ、勇者役は魔王倒したりとか面倒くさいのでお断りします。




うわぁぁぁ〜もぉぉぉ〜いろいろしてみてぇぇぇーーー!!!  無双してぇぇぇーーーーー!!!

ポクポクポクボボクボゴォッボボボボボボッ



「コラァァァ!!ぜんっ!お経に集中せんかぁ!!」



ウチの魔王が降臨した。この寺の住職である父、源三げんぞうだ。今の顔は阿修羅像にだって負けない。



どうやら俺は、異世界の事を考える(妄想する)あまり、熱が入り過ぎて、木魚無双していたらしい。木魚も熱が入り過ぎて煙が出ている。無双ならぬ南無双。…フッ、いや参ったね、強者は辛い。



「「「 ………………… 」」」



…他の僧侶達の視線も辛い。



「そんなに叩いたら壊れてしまうわっ!そもそもこの経には木魚を叩くところなんてそんなになかろうがっ!集中せいっ!!まったくそんなことでどうする!だいたいお前は…」



親父の説法が始まった。ーしかし信善の耳には入らないー



親父は俺に寺を継がせたいらしく、俺が一人前になったら名前を信善のぶよしから信善しんぜんにするそうだ。だから、今はその中間のぜんと呼んでいる。


親父は人を見る目が無いのだろう。住職なんて俺に務まるわけがない。修行僧も務まってないんだから。俺に説法する前に、俺を継がせようとしている己を説法した方がいいよほんと。



説法はまだ続いている。ーしかし信善の心には響かないー



まぁ、姉のような兄も居るのだが、なにせ姉のような兄なので、、、うん、この話はやめよう。来たら面倒だ。


別に住職なんて世襲制じゃなくてもいいんだし。

玄龍寺ウチは僧侶達の居住用建物があるから出て行かなくちゃいけないとかの心配も無いので、なおさら誰がなってもいいと思うのだ俺的に。てか、マジで誰かなってくれ。(切望)




…いつの間にか読経が再開されていた。




…はぁ。こんなことしている場合じゃないのに。

乗馬クラブ予約しておかなくちゃ。


無料体験している乗馬クラブを探してはハシゴしている。

お陰で普通に馬で走れるくらいにはなれた。

これで乗馬スキルも取得しやすいだろう。ふふ。


普通に馬での移動も出来るようになるし、あとは

騎兵とか…某英雄のように単騎駆けで一騎当千とか?!

うわぁぁぁ!!!やべぇぇぇーーー!!!

かっけぇぇぇーーーーー!!!!!

チンチンヂンヂンヂヂンヂヂヂーンヂーーーン


「いい加減にせんかあぁぁぁ!!!」ヂィィィィン


(( ヂィィィィン )) かぁぁぁぁ



(( ヂィィィィン )) ぁぁぁぁぁ



(( ヂィィィィン )) ぁぁぁぁぁ



今度は鐘無双していたらしく怒られた。鐘の音と親父の怒鳴り声が木霊こだまする…。鐘うるせ。しかもよく見ると鐘を鳴らしていた棒に傷が入っている。強く叩き過ぎたか。…フッ、いや参ったね、強者は辛い。




「「「 ………………… 」」」




…他の僧侶達の視線も辛い。みんな耳を塞いでいる…。ごめんなさい。



「お前はどうも集中力が足りんようじゃな。写経の時間を増やそう」

「いやいやいや、むしろ集中力抜群だから!これはその結果だから!」



鐘の音に耳を塞いでいた僧侶達より、鐘の音など全く耳に入ることなく一心不乱で鐘を鳴らしていた俺の方が集中力あると思うのだが。心外だ。



「では、その経の教えをワシに説いて聞かせてみろ!」


… えーと、


「信じれば救われる的な?常に仏を信じ、仏の声(教え)に耳を傾けて実践すれば願いは叶う的な?いやでも俺、小さい頃から願ってるけど、未だに叶えてもらったことねぇしなぁ。やっぱり神様と仏様じゃ違うのかなぁ。じゃぁ、俺、ちょっくら神様に頼みに行ってくるわ!」



全力R(L)ダッシュ!!



「またんかいっ!!逃げるな!!!」




こうして俺は近くの神社に行ってみることにした。

決して親父の説法から逃げたわけではない。決して。


タイミング的に今だと思ったのだ。いろんな意味で。



そもそも、異世界に行くには神様に会って、能力を授かってから転生or転移するのがお約束だしね。



しかし、このタイミングが良かったのか悪かったのか、、


後々、頭を抱えることとなる事を、この時の俺は知る由もなかった。


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