流れ星を越えて (終)

春嵐

over extended.

「ごめんごめん。待った?」


「ううん。持ってない」


「どした?」


「流れ星。見てたの。紅い空を、綺麗にひとつだけ、長く残ってて」


「そっか。綺麗だった?」


「うん。綺麗だった」


「それはよかった。落とすの大変だったから」


「うん?」


「いや、ええと。聞こえ、ますか?」


「うん」


「あなたのことが好」


「好きです。私。あなたのこと好きです」


「被せてくるね?」


「さっき被せてきたから。被せなきゃと思って」


「好」


「好きです」


「愛し」


「愛してます。大好き」


「あの。発言権をください」


「どうぞ」


「好きです。隣にいたい。そばにいたい」


「どうぞ」


 ちょっとだけ、横にずれる。

 くっついた。

 温度。

 暖かい。


「あ」


「ん?」


「見て。流れ星」


「え。うそ」


「綺麗だよ。ほら。あそこ」


「ほんとだ。うわあ。ごめん。仕事の電話しなきゃ」


「うん」


「ごめんほんと。ほんとごめん」


「どうぞ」


「え?」


「わたし耳栓します。はい。耳栓しました。あなたの声は聞こえません。流れ星見てるんで、電話どうぞ」


「あ、いや、え?」


「そばにいたいので。隣にいます。耳栓してるので電話どうぞ?」


「聞こえてますかあ?」


 無言。手が、繋がれている。背中が、寄り添っている。


「あ、聞こえてないな。じゃあ遠慮なく」


 流れ星。長く尾を引かず、きらっと光って、すぐに消えた。


「あら残念。長く残らないのね」


「よかったあ一般通過の流れ星だったあ。まだやばい流れ星が残ってたのかと思ったあ」


 流れ星を越えて。今日がはじまる。


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流れ星を越えて (終) 春嵐 @aiot3110

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