第12話
四宮の退店を確認し、電気は付けたまま店を閉め後を付ける。
昼間のうちに確認した住所と相違ない。被害家族の写真とも一致するので、ひとまず四宮を信用してよいだろう。
カラン・・・
「いらっしゃいませ。・・・なんだ二川キサマか」
「おいおい、せっかくの客なんだからもっと喜んでくれてもいいんじゃないかな?ん?」
「・・・で?例の情報はどうだ?」
「相変わらずせっかちだね。とりあえずマッカランの12年を水割りでくれよ。」
二川はひとしきり香りを愉しみ、口に含み深い息を吐く。
「やっぱいい酒だなぁ。」
「最近はウイスキーも高くなってますからねぇ。」
「ささやかな贅沢を奪われるみたいでやだねぇ」
しばらく無言の空気が漂う。落ち着いたのか二川が鞄から書類を取り出す。
「例のガイシャ、あの子の最後の1年間分の被害報告だ。読んでいて吐き気がするぜ。で、奴の親父さんの情報がこっち。加害者側はまだ調べている最中だ。しばらく待ってくれ。」
「助かる。・・・なるほど、筆舌に尽くしがたいとはこのことだな。それにしてもこういう諜報は苦手だったんでは?」
「まぁ正直こういう調査は面倒くさいんだが、俺も子持ちだからさ・・・。」
そう、こう見えてこの二川は二児のパパだ。上の子はそろそろ小学生だったはずだ。自殺したあの子に感情移入したとてそう不思議ではない。
「俺が手伝いできるのはこういうことくらいだからな。あとはお前さんと依頼人に任せるさ。」
「いやいや十分だ。少ないがこれはお礼だ。」
「はは。ありがたいね。かみさんに財布握られてるからありがたく使わせてもらうさ。」
「家庭持ちも大変だな。」
「悪いことばかりじゃないさ。喧嘩することもまぁ少なくはないが、帰りを待ってくれているって言うのはありがたいことだよ。」
そういうものか・・・。所詮この身は独り者。結婚願望はあるんだが、独身を拗らせてしまったな・・・。
「ま、お前さんにもいい人が現れるだろう。」
「そんな日が来るだろうか・・・?」
自嘲気味に返答し、独身を拗らせすぎたなと改めて思う。
「はは、まぁそいつはわからん。あと、これは今回の協力者のリストだ。信頼できる奴らで、我々もよく使っている。何かあったらこいつらにも協力を仰ぐといい。」
二川はそう言うとMicroSDと飲み代を置き、街の闇に溶けていく。協力者・・・か。確かにもう少し手があれば楽に動ける。信頼できるので在れば・・・だが。
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