第11話

カラン・・・

「いらっしゃいませ」

「こんばんわ」


 昨日の中年が腰掛ける。

「今日はレッドビールをもらえますか?つまみにナッツを。」


 レッドビールを注ぎつまみと共に提供する。半分ほど飲んだところで口を開く。

「昨日の件ですが、ご協力いただけると言うことは本当ですか?」

「ええ、本当です。もちろん、下調べなど在りますので相応の費用を頂きますが。」

「ターゲットは?」

「主犯格と担任、学年主任、教頭、校長です。」

「期限は?」

「来年の命日までにできれば充分です。私自身の身の回りを整理する時間も欲しいので。」

「まとめて手を下しますか?それとも個別に?」

「学年主任と教頭と校長は先に個別で。残りはまとめてが希望ですが、ばらばらでもかまいません。」


 1年後までにか。それだけあれば充分な対策は立てられる。

「トドメはお客様が?」

「ええ。私が直接なさせねば意味がありませんので。っと、ボンベイサファイアをロックでもらえますか。」


 昨日までは腐った魚のような目をしていたが、今は活き活きとしている。目つきも昨日とはまるで別人で『覚悟』を決めたことが窺える。


「申し遅れていました。私、四宮吉治しのみやよしはると申します。」

「よろしくお願いいたします。」

「バーテンさんは以前何のお仕事を?」

「自衛官をしておりました。」

「なるほど。しかし、一般隊員とは少し違うようですな。」

「しがない一隊員でした。」

「まぁ、そういうことにしておきましょう。それでですね、謝礼ですが、今回は手付金としてこれだけですが用意しました。」


 カウンターに札束が5つ置かれる。

「こんなに?」

「こんな仕事を依頼するのですから・・・。それにどうせもう使う当てのないカネですので。」


 札束を仕舞い、向き直る。手帳と財布をしまい、四宮が離席する。


「ではよろしくお願いします。・・・次は月が変わるころに伺います。」


 依頼者について探りを入れておかねばな。

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