第4話 裏取り

 まずはあの女からだ。俺の素性を知っているとなればただ者ではない。警察上層部に厄介な敵が居ると言っているのが正しければ、警察とは違う情報技官か。


 某漁港防波堤

 このあたりは豆アジがよく釣れる。ある程度釣ったら南蛮漬けにすれば、店にも出せる。・・・っと、早速かかったな。

 サビキでいくらか豆アジを挙げていると昔なじみが見える。時間通りだな。


「よう、久しぶり。退官してバーテンやってんだっけか。」

「ああ。気ままな暮らしを堪能している。」

「・・・で、何を識りたい?」

「この女について。」

「こいつか・・・。確か内閣府に新しくできた防諜機関のメンバーだな。」

「知っているのか?」

「ああ、こいつはもともと俺たちの同胞だ。」


 あの女、自衛隊上がりか・・・。しかし、あんな奴は見かけたこともなかったが・・・、一体どこの部隊だったのだろう。


「かつては情報本部所属だったと記憶している。最終階級は二佐。数年前に内閣府に引き抜かれていった。」

「なるほどね。」

「あいつと何があったかは知らんが、仕事に関して言えば信頼できる。」

「貴様がそこまで言うやつか。」

「高慢なところとか無愛想なところとかあるが、まあ悪いやつじゃあない。」


コッ・・・

「言いたい放題じゃないかしら。」

「ゲッ・・・。」


 友人の顔から血の気が引いていく。こちらの動きは読まれていると思ったが、声をかけられるまで気配を感じさせなかったな。只者じゃない。


「まあそういうこと。信用はいただけたかしら?」

「ええ。依頼はお受けいたします。」

「よろしくね。今日は私が付けさせてもらったけど、しばらく忙しくなるから顔を出せくなりそうなの。寂しい思いさせるわね。」

「おいおい・・・。こんな女に好かれるなんて1曹もついてないな。」

 

 嘆息しつつも名刺を取り出してくる。

「もぅ、ひどい言い草ね。改めて自己紹介するわ。私は三枝しぐれ。かつてDIHに所属し、今は内閣にある国家情報本部に出向している。階級は1等陸佐よ。よろしく一木二尉。」

 

 1等陸佐に対してタメ口を利く、元同僚も何者なんだろうな。

「いまはしがないバーテン、一木元1等陸曹であります。」

「はは。おれは差し詰め、キューピッドと言ったところかな?で、こいつの仕事をおれが手伝ってもいいのかい?」

「構わないわよ?」

「こちらとしては手伝ってもらえるのは助かる。」

「報酬は・・・、副業禁止なんでお前の店ですこしおまけしてくれ。」

「よろしく頼む。」

「じゃあ、二川特務曹長も頼むわね。」


 元同僚もいつの間にか昇進していたか。しかし、特務とは一体・・・?些か疑問を抱きつつ、依頼の調査が始まる。

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