第26話:第5章②vs薄井②

 パン!


 須磨がラリーを制した。

 5―1

「どうだい。決めたぞ」

「ふん。1つとっただけだろ」

 釘を刺した。

「1つとったら次々行けるぜ。今までそうだったんだ」

「それはどうかな」

「今にわかるさ」

 須磨のサーブ。

 ――


 6―1

「あははは。まぁ、こんなこともあるさ」

 須磨は苦笑い。

「ふん。また口だけか。2度あることは3度ある」

「うるせぇ。黙ってろ」

「……お前がだろ?」

 ――

 薄井のサーブ。

 須磨のレシーブ。


 パン!


 須磨のボールが薄井を抜く。

 6―2

「よし。ここからだぜ」

「ふん、また口だけか」

「今度はそうはいかない」

 須磨のサーブ。

 薄井のレシーブ。


 パン!


 またボールが薄井を抜く。

 6―3

「よしよし」

「ふん」

「よーし」

 須磨のサーブ。

 ――


 6―4

「よし、3連取」

 須磨はノリに乗ってきた。

「ふん。なるほどな」

「……なにがなるほどだ?」

「いや、大虎や角田が負けるわけだな。思ったよりやるな」

 薄井は過去の試合を遠くから眺めていた光景を思い出していた。

「なんだ?なんか上から目線だな」

「ふん。別に上から目線じゃないぞ。こんな話し方だ、もとから」

「そうかい。それはいいが、次は先輩からだ」

「ふん」

 薄井のサーブ。

 須磨のレシーブは少し浮いた。


 パン!


 薄井のスマッシュが変に跳ね通る。

 7―4

「相変わらず変な打球だな」

「ふん。それが売りだからな」

 目玉商品というか、その人の個性というか。

「だが、返す確率は上がってきたぜ」

「まぁ、慣れたらな」

 薄井のサーブ。


 パン!


 須磨の強い返球が行く。

 7―5

「いきますよ」

「ふん」


 ――須磨はこのあと3連取

 7―8

 薄井のサーブ。

 須磨の返球。


 ボフッ


 ネットに引っかかる。

 8―8

「ふん」

「ふん、って先輩、安心しているんじゃないですか?」

「ふん。次もとってやる。それくらい朝飯前だ」

「……それ、俺も同じこと言いました」

 須磨は自分の恥ずかしい過去を思い出しながら、穴があったら入りたい気分だった。

「それがどうした?」

「いや、あまりそう言う言葉は使わないほうが」

「ふん、1つとったら次々とれる」

「……その発言も」

「うるせぇ、黙ってろ」

「……まぁ、いいですけど」


 ――

「8―11。ゲーム須磨。チェンジコート」

 宅井はいつも通り審判をしていた。そこに話しかける須磨。

「どうだ、俺も強くなっただろ?」

「今、試合中だから審判に話しかけないで」

 宅井はツーンと突き放した。

「そんなこと言うなよ。つれないな」

「君も大虎先輩みたいにナンパなの?」

「ばか、そんなわけねぇだろ」

「そうね、君には似合わないものね」

 審判の顔を崩さない宅井から離れて、須磨は自分の位置についた。

「ふん。なにナンパしているんだ」

「だから違うって!」

 須磨は審判のように冷静に否定した。

「ふん。動揺しないか」

「先輩、狡いですね」

「勝つためには心理戦も必要さ」

「そうですね。それは否定しませんよ」

「俺はしないがな」

「今したでしょ」

 心理戦のような心理戦でないようなやりとりをする2人。

「そんなことより、早くサーブ打て」

「……この人、もしかして変なひと?」

 須磨はサーブ。

 薄井のレシーブ。

 須磨のレシーブ。

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