第22話:第4章⑤vs角田⑤
「0―11、ゲーム角田、チェンジコート」
コールとともに、各々の位置に移動した。
「あなた、すごく動きが悪かったけど大丈夫?」
「はぁはぁ、大丈夫ですよ。体力には自信があると言っているでしょ」
「そういえばすごく今頃だけど、促進ルールは適用する?」
促進ルールとは、簡単に言うと試合時間が長くなった時に早く終わらせるように変更されるルールのことである。例えば、レシーバーがレシーブを13回成功したらレシーバーの得点になるようにする等がある。
「練習試合にそんなのいりませんよ。今までも最終セットで5点とった時にチェンジコートしませんでしたよ。面倒だったから」
「そうね。だったら今までどおりしましょう」
息が上がり切っている須磨と、少し息が上がってきた角田は確認を取った。
「じゃあ、サーブいきますよ」
「来なさい。楽にしてあげる」
「さっ」
須磨はボールを高く上げた。
パン!
須磨のサーブは勢いよく決まった。
1―0
「さっ!」
須磨は元気よくガッツポーズ。
「なっ、なによ今のサーブ、速い」
角田は元気よくがっくりポーズ。
「よし。次行くぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
「ん?なんだ?」
一時停止させた。
「はぁはぁ、あなた、サーブが早くなっていない?」
「そうか、気のせいじゃないか?」
須磨のサーブ。
「はやっ」
角田は返球。
パン!
須磨のスマッシュが決まる。
2―0
「さっ!」
「はぁはぁ……あなた、元気になっているわね」
「そうか。まぁ体力には自信があるからな」
「嘘おっしゃい。さっきのセットではほとんど動けていなかっ……」
角田は何かに勘付いたように目を見開いた。
「まさか、あなた、さっきのセットは体力温存していたの?」
「そうだよ。体力自慢にとって大切なのは、いかにして上手にサボるかだと思っているんでな。おかげでだいぶ楽になった」
それでも須磨はしんどそうだった。
「……とんだたぬきね」
「先輩に言われたくないね」
狐と狸のにらみ合い。
「しかし、体力が回復したとしても第一セットのように返すことができるはず。他にも何かがあるはずだわ」
「そんなの知らねぇよ。早くサーズ打てよ。まぁ、俺はその間に休むことが出来るから別にいいけどよ」
「休ませないわよ」
角田のサーブ。
須磨はカット返球。
「だったら、再び疲れさせるだけよ」
角田はカット返球。
パン!
須磨のスマッシュが決まった。
3―0
「さっ!!」
「はぁはぁ、どうして返せないの?あんなに返せたじゃない」
角田は息を上げながら考えていた。
「先輩もしんどそうだな」
「うるさいわね。わたしだって疲れるの……」
角田は気づく。自分の異変に。
「わたし、疲れている」
「――?そりゃあ疲れるだろ。こんなに打ち合っていたら」
「そうね。でも、そうじゃないわ。疲れるということは、反応とかが遅れるということよ」
「――当たり前だろ?」
須磨は理解するにあたって、雲をつかむような気分だった。
「そうね。でも、それが重要なの。あなたのボールはすごくいい早くてボールよ。でも、普段のわたしならなんとか返すことができる。でも、疲れて反応が遅れている今のわたしにはギリギリ返すことが困難だわ」
「――ということは、俺の勝ちか」
「そうでもないわ。あなたが今までの相手と違うことに気付けなかっただけよ。簡単に返球できない相手とわかったら、それ相応のやり方をするだけよ」
角田はサーブ。
須磨は返球。
角田も返球。
須磨はスマッシュ。
パン
角田の強い返球が須磨の横を通る。
3―1
「スマッシュをスマッシュで返しただと?」
「なんでもカットで返すと思ったの?」
角田は回りくどい言い方をした。
「でも、さっきまで当てることすらできていなかったじゃねぇか」
「だから言ったでしょ、やり方を変えた、と」
「へっ、どんなやり方かは知らねぇけどよ」
須磨のサーブ。
角田の返球。
「今度はスマッシュじゃねぇのかよ」
須磨のスマッシュ。
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