第23話:第4章⑥vs角田⑥
パン!
角田の強い返球が刺さる。
3―2
「なっ、また決めやがった。いや、当てやがった」
「そうね。もう空振らないわ」
「やってみろ」
須磨のサーブ。
角田のレシーブ。
「うおりゃ!」
須磨は再び強いスマッシュ。
パン!
角田の強い返球が決まる。
3―3
「なっ?」
「あら、また決まったわ」
「急に立て続けに当ててきやがった。しかも、前までなかった強いボールで。いったいどうしているんだ?」
「次はわたしの番ね」
「それにこいつ、さっきからまったく空振らない。まるで俺がどこにボールを返すか分かっているみたいに打ってくる」
須磨は頭を回転させたが、メリーゴーランドのように遅くて間に合わない。
「いくわよ」
角田のサーブ。
須磨の返球。
パン!
角田はまた強い打球を決めた。
3―4
「どういうことだ」
「何かしら?」
「どうしてここに来て、そんなに強いボールが打てるんだ?体力がなくなっているはずだろ?」
須磨は考えがなくなった。
「ふふ。たしかに体力はなくなって疲れているわ。思ったより強いボールが打てないわ」
「なんだと?だったらどうしてそんなに強い球が打てるんだ?」
「ふふ、強い球を打つのに必要なのは、体力とか身体的なものだけではないわよ」
「どういうことだ?」
「さあね」
角田のサーブ。
須磨のレシーブ。
角田はそのボールを待ち構えた。
パン!
須磨の横を強いボールが過ぎる。
3―5
「くそ」
「やーね。またその言葉?進歩ないわね」
「うるせぇ。こっちはそのやりとりをする元気がないんだ……」
須磨は思いついた。
「まさか、そういうことか」
「なによ?」
「俺が疲れているから、先輩のボールが早く見えているのか」
頭の回転が速くなった。
「あら、そうなの?」
「誤魔化そうそしたってそうはいかねぇぞ。お前もさっきまでそうだっただろ?」
「まぁ。否定はしないわ」
「そうとわかれば、すっきりしたぜ」
須磨のサーブ。
角田は返球。
「うらぁー!」
須磨はすっきりした頭でコーナーギリギリを狙った。
が、ボールはコーナーに行かなかった。
パン!
角田はコーナーギリギリに決めた。
3―6。
「はぁはぁ」
「ふー。疲れるわ」
「そうか、そういうことだったのか」
「今度は何よ」
「俺は勘違いしていたようだぜ」
「何よ、もう」
角田は須磨の同じようなムーブメントにうんざりした。
「お前が俺のボールを返せるようになったのも、強いボールを打てるようになったのも、俺の疲れのせいではなかったのか」
「……」
「お前、俺がどこにボールを打つのか分かっているのだろ?」
「あら、どうかしら」
「もっと正確に言うと、俺のボールの打つところを操作していたのだろ?俺がどこにどんなボールを打つのか計算して、ボールの回転や方向を決めて、俺の打つボールを自分にとって打ちやすいボールにする」
須磨の説明は終わった。
「ふふ。だったらどうだというの?」
「どうだというわけじゃねぇけど。謎が解けてすっきりしたぜ」
須磨のサーブ。
「結局、何も変わらないでしょ?」
角田のレシーブ。
「そうだな」
須磨のスマッシュ。
「もらったわ」
パン!
ボールはそのまま角田の後ろに飛んでいった。
4―6
「なっ?」
「よーし、決まった」
「な、なせ当たらない?予想どうり来たはずなのに」
角田は一縷の疑問。
「次はあんたのサーブだぜ」
「どうせたまたまよ」
角田のサーブ。
須磨はスマッシュで返した。
「なっ?!」
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