第21話:第4章④vs角田④
パン!
「21―19、ゲーム須磨、チェンジコート」
コールとともに須磨は水筒に口をつけた。がぶ飲みだった。
その様子を角田は静かに水分補給しながら眺めていた。
「そうとう疲れているようね」
「はぁはぁ、そういう先輩は余裕そうですね、セット取られたのに」
「まぁね、こんなフラフラの子から2セット取るなんて簡単だからね」
「へっ。次のセットをとって、さっさと終わらせてやるぜ」
「そうできたらいいのにね」
――2人は各々の位置についた。
「やってやるよ」
「では、やってみなさい」
角田のカットサーブ。
須磨はいつも通りカットレシーズ。
パン!
角田のスマッシュが炸裂。
0―1
「なっ、スマッシュ?」
須磨はバカみたいに口が開いた。
「よし。1ポイントね」
ルンルン気分の角田。
「ちょっ、先輩、どういうことだよ?」
「どういうこと、ってどういうこと?」
「なんでスマッシュしているんだよ?今までそんなことしていなかっただろ?」
須磨は両手を広げて質問した。
「なんでって、スマッシュしてはいけないルールがあるの?」
「いや、そういうルールはないけど、そうじゃなくて、信念というか、プレースタイルというか」
「なるほど。さっきまでスマッシュしなかったと、カットマンはスマッシュするなと、持久戦のカットだけしとけ言うのね」
「……言い方はあれだけど、そういうことだ」
須磨は汗だくで頭が回らない。
「でもね、わたしがそういう戦い方をしていたのは、あなたの体力を削ることを目的にしていたからよ。既に体力がなくなったあなたにそういうことをする必要はないわ。だから、違う戦い方をさせてもらうわ」
角田はサーブ。
須磨はレシーブ。
パン!
角田のスマッシュが決まる。
0―2
「またスマッシュか」
「カットばかりで飽きていただろ?」
角田は余裕の表情。
「そうだけど、これはこれで飽きそうだな」
「飽きないように頑張りなさい」
「うるせぇよ」
須磨のサーズ。
角田のカットレシーブ
「なっ?」
須磨は返球。
角田は再びカット。
「また長期戦かよ」
須磨は返した。
パン!
角田のスマッシュ。
0―3
「……スマッシュかよ」
「あら、またカットばかりの持久戦だと思った」
「あぁ、思ったよ」
「まぁ、実際にそうしようと思ったわよ」
「どうしてしなかった?
「うーん。あなたがそれに気づいている気がしたの。だから、わたしはスマッシュでの短期決戦にしようとしたのよ」
角田は考えながらそれとなく言った。
「はっ、バレていたのか」
須磨のサーブ。
角田はカット。
須磨はレシーブ。
角田はカット。
須磨はレシーブ。
……
バフっ
須磨のボールはネットアウト。
0―4
「はぁはぁ、今度は持久戦」
「あら、ご期待に応えたつもりだけど?」
「ありがとよ。別に期待していないけどな」
須磨の顎から汗が地面を濡らしていた。
「まぁ、状況によって変えているだけよ。あなたがスマッシュに合わせてきそうだから、意表を突いたつもり」
「そうか、それは困ったな」
須磨は本当に困っていた。
「ふふ。それくらいわたしじゃなくてもだれでもやるでしょ?」
「あいにく俺はあまりやらないな」
「別に否定はしないわ。人それぞれだもの」
「そうかい」
「それよりも、あなた、本当に限界そうね。さっきのラリー、30秒くらいで終わったわよ。今までの半分以下よ」
角田は優しい口調だった。
「限界じゃねぇよ」
須磨は厳しい口調だった。
「そう?だったらいいけど」
角田はサーブ
……
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