第18話:第4章①vs角田①
4
後日の部室。
「どうしてわたしが須磨と戦わないといけないの」
ロン毛の男は大虎に言った。
「いいじゃねぇか。俺の敵をとってくれ、角田」
大虎は角田に言う。
「いやよ。どうしてあんたの敵をとらないといけないの?」
角田は断る。
「同級生の馴染みでさ。お願い」
「いやよ。同級生といっても、仲がいいわけじゃないでしょ?絶対にやらないわ」
「おねがい。パフェ奢るから」
「やりましょう!」
角田は了承した。
「というわけで、角田と勝負だ、須磨」
角田の肩を持ちながら、大虎は須磨を指さした。
「……俺はなんの寸劇を見せられているのですか?」
須磨は目を点にさせていた。
【練習試合:須磨VS角田:2セット先取】
「サーブはあなたからでいいわよ」
「わかった」
須磨はサーブを打った。
と、角田はラケットを上から下に振り下ろし、下回転をかけてきた。
「いきなりカットかよ」
須磨は普通の回転で返した。
「いきなり悪い?」
角田は再び下回転。
「別にいいけどよ」
須磨の返球。
「それは良かった」
角田は後ろに下がりながら下回転を掛ける。
「もしかして」
須磨はそれを返球。
「もしかして、なに?」
角田は再び下がりながら下回転。
「お前、カットマンか?」
カットマンとは、ボールに下回転をかけるカットを主に使うプレースタイル。基本的に防御型であり、長期戦に持ち込んで相手のミスを誘う戦法。
「そうよ。なにか問題でも?」
角田はカットした。
「問題はねぇよ」
パン!
今までより強い須磨の打球が角田の横の空間を射抜いた。
1―0
「な?問題ないだろ?」
「わたしには問題はあるわ」
軽く会話をする須磨と角田。
「というか、なぜ僕が審判しているのですか?
「いいじゃねぇか。よろしくな」
こちらも軽く会話する宅井と大虎。
「って、なにしてんだよ!」
宅井にベタベタ触る大虎に須磨は噛み付いた。
「だってー、女子と話すことなんてあまりないしー」
「知らねぇよ。邪魔だからどっかいけ!」
須磨にそう言われた大虎はトボトボと離れていった。
「もー、気が散るわね」
角田はよそ見していた。
「それは負けた時の言い逃れですか、先輩?」
「いいえ、負けないわ」
「そうです、か」
須磨のサーブ。
角田はカット。
「はっ!」
須磨は強く打った。
角田はカット。
「はっっ!」
須磨はさらに強く打った。
角田はカット。
「はぁっっ!!」
須磨はさらにもっと強く打った。
パン!
が、ボールは外れた。
1―1
「くそ!」
「汚い言葉ねぇ、もう」
角田は汚物を見るような嫌そうな顔をした。
「汚くねぇだろ、これくらい」
「これだから男子は」
「お前もだろ!」
須磨は奇異なものを見る気分だった。
「あら、そうね、ふふふ」
「気持ちわるいな」
「そんなことより、行くわよ」
角田のサーブ。カットで下回転。
「やっぱりな」
須磨はカットで返球。
「あら、カットできるの?」
角田は返球。
「当たり前だろ」
須磨はいつも通りの強い返球。
「あら、そう?」
「そうですよ」
ボールの返球をしながら言葉の返球をしているようだった。
バフっ
須磨のボールはネットに遮られた。
1―2
「くそ」
「だから、その言葉汚いわよ」
角田は再び注意した。
「うるさい。別にいいだろ」
「良くないわよ。言い方に気をつけてよ」
「ちっ、わかったよ」
意外と修正してくれる須磨。
「じゃあ、行くわよ」
角田のサーブ。
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