第14話:第3章③vs大虎③
パン!
須磨の返球がついに入った。
が、それを大虎は返した。
「1―11。1セット大虎。コートチェンジ」
宅井はコールした。
「くそっ!」
「へー。ついに入れやがったか」
コートを回りながら、2人は肉食動物のようににらみ合っていた。隙さえあえば相手の首をカッ切りそうな目だった。
2人は立ち止まった。その気迫は止まるどころか、余計に激っていた。
「次は俺からだな」
大虎は言いながら、サーブを打つ。
須磨は今度も返す。
パン!
が、そのあとの大虎からの返球には間に合わなかった。
0―1
「俺のポイントだ」
負ける気のない自信満々の大虎の声。
「でも、少しずつ返せるようになってきたぜ」
「そうだな。でも、それだけだ」
大虎のサーブ。
パン!
ボールは大虎の横を通過した。きちんとバウンドした後に。
1―1
「追いついたぜ」
「……速くなっている」
大虎は自信を少し霞んだ声を出した。
「そりゃそうだ。慣れてきたからな」
「慣れてきたから?」
「そうさ。さっきまでは入るように少しだけ力を抑えてコントロール重視で行ったのさ。でも、もう慣れたから全力で打てる」
「なに?今までは全力でなかっただと?」
大虎は眉毛をピクリとした。
「そうさ。嘘だと思うのならまた打ってこいよ」
須磨は挑発していた。
「……はっ。そんなことを言う暇があれば、さっさとサーブを打て」
挑発を交わした大虎に向かって、須磨はサーブを打った。
大虎は返した。
パン!
再び大虎の横をボールが過ぎた。
2―1
「速っ!」
「どうだ、もう見切ったぜ」
コロコロ転がるボールを見る大虎。
「見切った、だと?」
「そうさ。あとは勝つだけだ」
「へっ。やっぱり生意気な奴だな」
「ありがとよ」
そう言いながら須磨はサーブ。
パン!
須磨は大虎の返球に反応出来なかった。
2―2
「だったらこっちも慣れてきたことだし、本気で行こうか、後輩」
牙が生えたように見える大虎の笑み。
「……いいぜ。やろうぜ、先輩」
須磨は少し汗をにじませた。
その後は一進一退の攻防。互いにポイントを取り合った。
6―6
「少しは先輩をたてようと言う気はないのか?」
「ないね。勝つ気しかない」
互いに野心がバチバチと火花を散らしていた。
「……かわいい後輩だな」
大虎のサーブ。
パン!
ボールは大虎の後ろに。
7―6
「また速くなった」
「まだまだギアを上げるぜ」
加速していく試合。
「それにしても、俺のサーブにもう慣れたか」
「そりゃあ、サーブは自陣に1バウンドする分レシーブより遅いからな、簡単に返すことができる」
「そりゃそうか。俺もお前のサーブは返せるしな」
大虎のサーブ。
パン!
8―6
「流石にやべぇな」
「どうした先輩、降参か?」
「ぬかせ。来い」
気迫の入った大虎に、須磨のサーブ。
パン!
須磨の横にボールが通る。
8―7
「サーブは返せると言っただろ、後輩」
「さすが先輩だな」
互いに舌戦模様。
「ありがとな。嬉しくないけどな」
「行くぞ」
須磨のサーブ。
パン!
8―8
「追いついた」
「くそ。離せねぇ」
大虎の牙が須磨の喉元に狙いを定める。
「離してもいいんだぜ、勝つのは俺だけどな」
大虎のサーブ。
パン!
9―8
「誰が勝つって?」
須磨の反抗。
「オレだよ」
大虎のサーブ。
パン!
10―8
「はぁはぁ、離したぜ」
命からがら生き延びたように須磨は息をする。
「追いついてやる」
「そうはいかない」
須磨は大きくボールを上げた。
それを大虎は返球。
追いつく須磨。
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