第13話:第3章②vs大虎②
パン!
ボールは再び大虎のはるか上方に上がって壁にぶつかった。
0―4。
「入りそうにねぇな」
「やっぱりおかしい」
さらに大きく首をひねった。
「あぁ?何がだよ?」
「ボールが入らないにしても、外れすぎている。こんなに外れることなんかなかったのに」
「知らねぇよ。片目から両目になったからじゃねぇのか?」
「……そうかもな」
「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとサーブ打て」
そう急かされて、須磨はサーブを打った。
パン!
それはきちんと入った。それを大虎は見送った。
1―4。
「ほー、速いねぇ」
大虎は須磨のことを少し認めた。
「へっ、今日は早めに入ったぜ」
互いに入ったボールを見ていた。
「まぁ、まぐれの可能性があるけどな」
「だったら、まぐれかどうか、確かめてみるか?」
須磨は大きくボールを上げた。
パン!
ボールは須磨の後ろに飛んでいった。それは大虎からの虎のような返球だった。
1―5。
「まっ、速いけど返せないボールじゃねぇな」
「ほぉ、やるねぇ」
互いに好敵手を見つけたような笑みを見せた。
「じゃあ、次は俺のサーブだ」
「エンジンが掛かってきたから、返してやるぜ」
大虎のサーブ。
パン!
ボールは大虎のはるか上空に。
1―6
「なっ?」
須磨は疑問の驚き。
「やっぱり入らねぇなー」
大虎はニヤニヤ不気味に笑っていた。
「おかしいぞ。普通なら入るはずだ」
「まだ感覚が戻っていないんだろ?」
「そんなはずはない。もう感覚は戻っているはずだ。それがあんなに高く上がるということは、お前」
須磨は何かを言いたげだった。
「どうした?」
「お前、ボールにドライブ回転かけているな。しかも、かなりの回転を」
ドライブ回転とは、下から上にボールをかすってかける回転。効果として、バウンドしたボールが加速したり、打ち返したらボールが上方に上がりやすいといったところがある。
「それがどうした?」
「先輩、思ったよりしたたかですね。俺の感覚やコントロールが悪いことを利用して、ドライブ回転かけていることを隠すなんて」
「隠すというほどのものでもないだろ」
「……このやろう」
互いに悪い顔。
「次のサーブ行くぞ」
「ドライブが来るとわかったら、こっちもやりようがある。少し下を狙えばいいんだよ」
大虎のサーブ。
須磨は少し下を狙った。
パン!
ボールは大虎の顔面横を飛んでいった。
1―7
「なん・だと?」
「ざーんねん」
互いに言葉使いが違うふうになって特殊な空気でその場が覆われていた。
「どうしてだ。ボールが下に行かない?いや、さっきより下に行っているが?」
「俺のドライブは並のドライブと違うんだよ」
「なんだと?」
「お前は、普通のドライブに対抗するようにしているが、そんなしょぼいドライブじゃねぇんだよ、俺のドライブは」
大虎は王様のような傲慢な言い方をしていた。
「……そんなヒントを送っていいんですか?」
「いーんだよ。それで対策できたやつなんてほとんどいないんだから」
「俺にも対策できないと?」
「さぁね。対策するんだったら、死ぬ気で対策してこい」
大虎は虎のように鋭い目だった。
「まったく。思ったりやるね」
そう言いながら、大虎は大きくボールを上げた。
パン!
大虎からの返球を須磨が打ったら、ボールは未だに高く飛んでいく。
1―8
「まだ高いか」
「せいぜい頑張れよ」
計算している須磨は再びサーブ。
パン!
今度は、床に叩きつけた。
1―9
「これは下に行き過ぎか」
「極端だな、お前」
「まぁな。細かいことは苦手なんだ。だから思いっきりな」
「面白いやつだ」
にやりと笑う大虎のサーブ。
パン!
ボールは大虎のラケットの横を通過。
1―10
「これでもダメか」
「……これは驚いた。だいぶ合わせてきたな」
そう余裕のある驚きのなか、大虎はサーブ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます