第4話:第2章②練習試合①

「おい、罰ゲームはどうする?」

「罰ゲーム?」

 先輩の悪い顔に対して冷静に返事する少年。

「そうだ。そのほうがハリが出て面白いだろ」

「先輩がそれでいいのならそれでいいですよ。それで、罰ゲームは何にします?」

 凄む先輩に、飄々とする少年。

「おまえ、生意気だな。負けたほうが肩パンでどうだ?」

「いいっすよ。それで」

 どこまでもイライラする先輩と冷めた少年。

「じゃあ、やるか。ところで、お前の名前はなんだ?」

「人に名前を聞く前に、自分の名前を名乗ったらどうだ?」

 偉そうな先輩の態度に対して後輩はふてぶてしい態度。

「どこまでも腹立つ野郎だぜ。俺の名前は、佐藤だ!」

 そう言いながら、先輩である佐藤はオレンジ色の球を赤いラバーに叩きつけてサーブを打った。それを少年は力いっぱい吹き飛ばした。

「俺は、須磨だ」

 そういう少年の須磨が放ったボールは力強く矢のように一直線に進んでいった。それは立ちはだかるものを全てなぎ払う光線のように進んでいった。そして、それはそのまま佐藤の額に直撃した。


バチコーン!


 ボールは佐藤の額から温泉を引き当てたように勢いよく飛び上がった。

「どうだ、俺のボールは?」

 須磨はふてぶてしく振りかぶったラケット越しに言った。

「……お前」

「なんだ?怖気付いたか?」

「アウトだろ!」

 佐藤は指摘した。

「あらら、そういえばそうだな」

 相手のコートにボールがバウンドしなかったらアウトになる。

「てめぇ、ふざけているのか?」

 佐藤は当然のように怒る。

「ふざけていませんよ。本気ですよ」

「たく。1―0だぜ」

 そう言いながら、佐藤は2本目のサーブ。

「さっ!」


 バチコーン!


 そのボールは再び須磨のラケットから佐藤の額に一直線に進んだ。

「……てめぇ、わざとか!」

「違いますよ。うまくいかないんですよ」

 額に青筋を浮かべた佐藤と涼しいカオの須磨。

 サーブ権は須磨へ。

「てめぇ、わざとぶつけてんのか?」

「まさか。先輩じゃあるまいし」

 須磨は挑発的な態度。

「……2―0だぜ」

 佐藤の小言。

 須磨はボールを高く上げた。時間が止まった。そのボールをラケットに確実にとらえる。


 バチコーン


 額へ。

「てめー、わざとだろ!」

 佐藤はテーブルの横をドカドカと横切り須磨の胸ぐらをつかむ。

「わざとじゃないですよ」

 服を引っ張られても憮然として態度の須磨。

「だったら、どうしてサーブがノーバウンドで飛んでくるんだ!」

「た・だ・の・サービスミスだよ」

 佐藤は歯ぎしりしながら胸ぐらから手を離した。須磨は服を正した。

「3―0だ。早くサーブ打て」

 佐藤のはやしたてに、須磨はサーブを打った。そのボールはすごい勢いでネットに絡まった。

「4―0。こっちにボールを」

 須磨はネット横のボールを送った。


5―0

6―0


 須磨の返球は共に外れた。1つはネットに、1つは佐藤の腹部に。

次は須磨のサーブ。


 7―0

 8―0


 須磨のサーブは共に外れた。1つは1バウンド後に佐藤の腹部に。1つは1バウンド後にネットに。


「あぁダメだ。もう少しで11点だ」

 その試合を見ている男子はつぶやいた。

「わからないよ」

 その男子の横に人が1人の学生が来た。

「え?」

 男子は視線を声の方に向けた。

「少しずつ、修正している」

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