第58話 聞こえない

新緑の季節

輝く陽の光

風が緑を揺らす

光と影が交差する

明と暗に

記憶を揺さぶるように


こもれびに散りばめられたあなたの記憶


記憶の中だけのあなたは

笑っていて

よく笑う人だったから笑ってばかりで


だから一緒に笑っていたいのに

涙がこぼれた


風が緑を揺らす

こもれびの下で光は揺れながら

あなたも光に揺れながら

笑うあなたのかけらたちに手を伸ばす

掴めるはずもないのに

光がさえぎられ影になる


何故いないの?

どうしてそばにいてくれないの?

もう流す涙を拭う人はいなくて


ただ風が騒めきながら葉を揺らす

そこにあなたの声は聞こえない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る