第57話 青い光

夜の闇の中

あなたとの想い出の場所のひとつ


仄かな光を浮かべるように

想い出を灯しながら

やってきた


手には貰い物の懐中電灯

足元を照らし

あの時教えてもらったように

小石を見つけては

ポケットにつめこむ


ひとりで夜の海を歩きながら

思い出すのはあなたのこと


潮騒の音

潮は騒ぐけれど

あなたの声は当たり前に聞こえない──


溜息をついて海をみれば

暗い波が強くうねり

そこに淡く青い光が生まれて消える


光ったねと笑い合ったあの時が

闇に浮かんで消える


ポケットの中から取り出し握りしめた石

あの時ふたりで投げたように

今はひとりで海に向かって石を投げる

途端強い青い光が生まれて消える


あの時見た光と同じ青の光

あなたが教えてくれた

石を投げるともっと光るよ

これは夜光虫だよと指をさして笑ってくれた


石を投げる

光る青の軌跡

石を投げる

光る青

想い出の中のあなたが笑う

もっと笑って

もっともっと……

何度も何度も石を投げる


広がり光る青の軌跡


ひとりでも見たかった青い光

ふたりでみたかった青い光

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る