第51話 お願いだから

お願いだからそばにいて

私をひとりにしないで

あなたの腕の中

私を強く抱きしめて──


私は冷えた部屋の中

ひとりうずくまる


あなたがいた痕跡が

あちらこちらに見えて

手を伸ばしそうになる

あなたに触れたくて


自分の冷えた掌で頬を覆ってみても

それはあなたの手ではなくて

両腕を自分に絡めてみても

それはあなたの腕ではなくて


あなたはもういないのに

私はあなたのぬくもりを

忘れられずにいる


優しいあなたの両腕

あなたのぬくもりと匂い

あなたの全てを感じていたい

なのに──


もう二度とあなたに抱きしめられることはない


お願いだからそばにいて

あなたがそばにいて欲しい

それが所詮無理なことはわかっていても

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