第30話 足踏み

扉を開けて外に出る

いつもと同じでありながら

いつもとは違う光景


やけに静かで寒いと思っていたが

周囲を見やればそこは雪景色

白い雪のうっすらかかった

屋根に軒に樹々に

いつもの風景が違うものに


私は口元に冷たい両の手を近づけて

ふうと息を吐く


冷えた空気に白い息

少しだけあたたかくなった掌


白い雪に

ふと触れてみたくて

近づこうとしてみたが

手を伸ばしかけてやめる


そっと冬の名残を見つめ

その視線を空に向ける


早春の季節の変わり目

春はまだ足踏みしているようだ

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