第3話 分岐あり

 古典こてん遊戯ゆうぎ部というのが、俺が所属している部活である。

 学校側が認めている正規の部活ではなく、勝手に作られた非正規の部活だった。


 部活、と言っていいのだろうか。

 空き教室を勝手に使って騒いでいる集団にしか思えないのだが。


 しかもメンバーは生徒ではないし、言ってしまえば人間でもなかった。

 唯一人間なのは、俺一人だけ。


 けれど、こうやって人間以外の奴と一緒にいられる俺も、人間という枠に収まらないなにか、という可能性もある。


 ないな。俺は人間だ。それは間違いない。


 人から生まれた人間が人じゃないなにか――というのはぶっ飛んだ話だ。

 俺の母親が人間なのだから、俺も人間なのだろう、そのはずだろう。


「なにをぶつぶつと言っているんだ?」


 淡がなんだコイツ……とでも言いたそうな視線を俺に向けてきた。


「なんでもない」


 声に出ていたとは不覚だった。

 おかしな奴だと思われた可能性がある。いや、もう思われているのだろうな。

 俺はコイツらを変な奴だと思っているし、

 コイツらも俺のことを変な奴だと思っているのだから――お互い様だ。


 少なくともまともではないだろう。


「なんでもないのなら、それならそれでいいが」


 淡の言葉を聞きながら、校舎内をぶらついていると……前。


 道が三つに分かれていた。


 進むべきルートが三つある……、


 一つは右に曲がる。

 一つは左にある階段を上る。

 一つはその階段を下る。


「さて」


 淡が、顔を俺に向けた。身長差のせいで、見上げる形だった。


「どこに向かうか」

「お前が決めていいぞ」


 俺は面倒くさかったので、全てを淡に任せようとしたのだが、


「なんで私が決めなければならんのだ。面倒くさいし、面倒くさい」


 はっきりと言いやがる。


「お前が鬼なんだから、お前が決めろよ。運も実力の内と言うからな」


 ということは、実力も運の内に入るのだろうか。努力を否定しそうな言葉だ。


 俺としては、全てを淡に任せてしまう腹積もりだったので、いきなり仕事が振られて戸惑ってしまった。

 この選択でなにかが変わるわけがないと言えるのだが、しかし、言えないとも限らない。

 こういうのは、変に悩んでいる方がダメな気がした。


「――よし」

 

 俺は一瞬だけ考え――否、考えてなどなく、直感で選んだ。



「まずは――」

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