第4話

 『飯ガチャ』でカップ麺を引き当てた俺。


 ユズリハは初めて見るみたいに珍しがっていたが、たぶんこれは演技なのではないかと思う。

 だって今時、カップ麺を知らないだなんて、どんな人間だよ。


 マンガとかに出てくるような、とんでもないお嬢様とか……。


 もしかしてユズリハその、トンデモお嬢様だったりするんだろうか。

 いやいや、そんなわけはない。なんでいいとこのお嬢様がガチャで出てくるんだよ。


 そんなことはさておき、カップ麺を食べよう。

 ちょうど腹が減ってたんだ。


 玄関近くにある台所でお湯を沸かそうとしたら、ユズリハが「わたくしがやります」と言ってくれたので、任せることにする。

 でも彼女はガスコンロの使い方を知らず、結局俺が教えることになった。


 ヤカンのお湯を、ふたつのカップ麺に注いで3分待つ。

 できあがったひとつをユズリハに渡すと、



「えっ? わたくしも、いただいてよろしいのですか?」



「ああ。2個あるってことは、そういうことだろ」



「あ……ありがとうございますっ!」



 たかが数百円のカップ麺だろうに、指輪でも貰ったみたいに感激するユズリハ。

 演技とはわかっているものの……可愛いすぎる。


 ユズリハは両手を合わせて「ごちそうになります」と俺に一礼、そしてカップ麺に向かって「いただきます」とまた一礼。

 バカ丁寧な挨拶をして、箸ですくいあげた数本の麺を、音もたてずにするりと口に運んでいた。


 次の瞬間、新鮮な驚きを見せる赤ちゃんのように、カッと目を見開く。

 それでも、お嬢様は自制心を働かせ、口を手でサッと覆い隠すと、



「お……おいしいですっ! とっても! かっぷらぁめんさんて、こんなにおいしいものだったのですね!」



「そうか、よかったな」



 俺はあしらうように適当な返事をしていたが、内心はドッキドキだった。

 演技とは、わかっていても……可愛いすぎだろうがよぉぉ!


 俺は気のないフリを装いつつ、カップ麺をズルズルとすする。

 食事中はスマホを見る癖があるので、つい手に取ってみる。


 『人生ガチャ』の画面には、先ほど引いたカップ麺の説明が表示されていた。

 そこには、



『ラキスケ発生率+80%』



 そういえばさっき、玄関でユズリハのパンチラを見たときも、『ラキスケ』とか表示されてたな。

 『ラキスケ』って、いったい何なんだ……?


 などと考えているうちに、食べ終わってしまった。

 ユズリハお嬢様は、カップ麺のスープまで、全部飲み干すと……。



「はぁぁ、大変結構なお手前でございました……!」



 幸せいっぱいの表情で、まるで茶道のようなコメントを残す。


 その後、彼女はてきぱきと片付けをはじめた。

 カップ麺を運ぶために使ったトレイに、空になった容器と箸を戻す。


 そして、そのままトレイの取っ手を持って、立ち上がったのだが……。

 次の瞬間、またしても見てしまったんだ。


 しかも今度は、チラリではなかった。


 ユズリハのスカートの裾は、なぜかトレイの間に挟まっていて……。

 そんな状態で、俺の目の前で立ち上がったものだから……。


 完全に、たくし上げ状態になった。


 そのため、全面が初雪に覆われた、逆さ富士のような……。

 まばゆい白さの、黄金三角が……!


 モロにっ……! これでもかと……!


 しかも俺はあぐらをかいて座っていて、彼女は立っていたので……。


 パンツと目が合ってしまったと錯覚するほどの、ちょうどいい高さにあった。

 しかも温もりが伝わってきそうなほどの間近に、JKのソレが……。


 しかも、中身つきで……!


 そのうえ、本人はまだ気付いていない。

 固まる俺を、キョトンとした顔で覗き込んでいる。


 直後、スマホが反応した。

 ハッと画面を見やると、そこには……。



 『チャレンジ達成! ラキスケで、嫁のパンモロを見た』

 『パワーアップガチャチケット 1枚ゲット!』



 それで俺は、ようやく気付いた。


 ラキスケって、もしかして……。

 『ラッキースケベ』……!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る