第2話

 少女は『エターナルF《フォース》L《レジェンド》R《レア》』と呼ぶに相応しい、絶世の美少女だった。


 腰まで伸びたストレートのロングヘアは、天使の輪ができるほどに艶やか。

 長い睫毛に大きな瞳は、天の川かと思うほどにキラキラ。


 小鼻におちょぼ口という純和風の顔立ちで、肌は透き通るほどに白い。

 身体は華奢で小柄で、150センチくらいだろうか。


 夜に降る雪のように、美しくも控えめなカンジがするのだが、胸だけは出しゃばっているかのように大きい。


 歳の頃は15~16といったところだろうか。

 どこかの高校の制服であろうセーラー服を、折り目正しく着こなしている。


 スカートにもピッチリとプリーツが入っているが、なぜか異様に短い。

 細くて白い太ももが、極限にまで露わになっている。


 いけないとは思いつつも目を奪われていると、外からぴゅうと木枯らしが舞い込んできた。

 吹き抜けていく冷たい感触に、少女は「きゃっ!?」と、めくれあがるスカートを抑える。


 しかしタッチの差で、俺はたしかに見たんだ。


 レースの、純白を……!



 ……ピロリン!



 俺が手にしていたスマホから通知音が鳴る。

 見てみると、『人生ガチャ』の画面には……。



 『チャレンジ達成! 初めてのラキスケ』

 『チャレンジ達成! ラキスケで、嫁のパンチラを見た』

 『パワーアップガチャチケット 2枚ゲット!』



 と、通知が並んでいた。


 な、なんだ、コレ……?

 あの子のパンチラを見たのと、アプリが連動してる……!?


 いや、今はそれどころじゃない。

 女の子のほうに視線を戻すと、恥ずかしくてたまらないといった様子で、顔を伏せていた。


 黒髪から覗く、真っ赤になった耳が、彼女の羞恥のほどを物語っている。

 「大丈夫か?」と声をかけると、引きつった返事が返ってきた。



「はっ、はひっ。すっ、すみません。お見苦しいものを、お見せしてしまって……。このように丈の短いお着物を身に付けるのは、初めてのことでして……」



 最初の緊張はだいぶほぐれたみたいだったが、やたらと古風な言い回しだった。

 彼女は上気した顔を上げると、潤んだ上目遣いで、俺をすがるように見る。



「あっ、あの……。このように至らぬわたくしですが、それでも一生懸命お尽くしさせていただきますので、どうか、おそばに置いていただけませんか? どうか、どうか……!」



 それで俺はピーンと来た。


 あ、コレ、受け入れちゃダメなヤツだ、と。


 家に上げたら最後、怖いお兄さんたちが乗り込んできて、目玉が飛び出るくらいの金を要求されるパターンだ。

 それで払えなかったら、マグロ漁船送り……!


 俺の脳内が、全力で警報を鳴らしている。

 相手にしちゃダメだ、相手にしちゃダメだ……!


 ……しかし気付いたら、彼女はゴミ溜めに咲いた一輪の花のように、俺の部屋の中で正座をしていた。



「初めまして、わたくしは愛染流あいぜんりゅうユズリハと申します。わたくしをお嫁さんにしてくださり、本当にありがとうございました。不束者ですが、一生懸命お尽くしさせていただきます」



 ユズリハと名乗る少女は三つ指をつくと、白いツムジが見えるくらいに、白いオデコが汚れたフローリングに付くくらいに、俺に深々と頭を下げていた。

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