第2話白色は異物
ごきげんよう皆々様。
私は愚かな愚かな機械にございます。
単に機械と言っても様相は様々な現代ではありますが、(もはや体のパーツに至るまで安価で民間に提供されているほどですからね)その中でも随一「奇妙」な機械―それが私、白々明しらじらあけ 恵めぐみでございます。
お気軽に私の事は「白ちゃん」と及び下さいませ。
機械なのに名前があるのか? と疑問でしょう。
あるのです。そこも奇妙なる私が奇妙たる所以にございます。
私はどこにでもいない、異常な機械。
そして十人十色が一色、白色担当。
世界彩る全ての基盤。
これはそんな私の手記にございます。
♢
♢
「君私の仲間になってよ」
校舎に入った瞬間の俺にそう言い放った赤髪の少女はこの学園の生徒会長らしい。さっき出会った白い女性とは対照的に全体的に赤いコーディネイトをしていた。
制服は自由着用だからだろうけれど、さっきの人もひょっとしたら生徒だったのかもしれないよな、などと少女(生徒会長)の話を聞きながら思った。
ちなみに本当に生徒会長かどうかは知らない。
「嫌です。それでは俺は入学式あるので」
「うんうん! そうだよねそうだよね~~! いやあこの私からこの私の言葉で『仲間になってよ』なんて言ったのだからそりゃあ承諾してくれるよね~~!」
あ、話聞いてくれてない。
「話しを…」
「あ、ごめんよ~! そうだよねそうだよね! こんな美しい私の美声! 入学式の前に聞いちゃったら私に夢中になってしまって話が頭に入んなくなるものね! 分かった分かった! これくらいにしておこう!」
何だ。「嫌です」だけが聞こえていないのか。
「いやんなわけあるか」
「え?」
「いやなんでも無いです。」
また負けた。
「まあそんな感じだから! よろしくね!」
「いやですから、生徒会とか俺には無理ですって……」
「そう言わず! 人を助けるって思って! もう君ぐらいしかいないのよ! 君ぐらいしか私の話聞いてくれないし立ち止まってもくれないし! このままじゃ我学園生徒会は廃部だ!」
「嘘をつけ嘘を」
あ、しまった先輩にタメ使ってしまった。
ま、いいか。
「どうして俺に生徒会とか出来ると思うんすか?」
「いや、なんかさ! 君さ! 人間っぽくないっていうか??」
「……」
「あ、ごめんね。少し言い方が悪かった! えっとつまりね私が言いたいのは、君は敵に回すと面倒くさそうだし、味方にすると強そうだという事さ!」
「……そうですか」
抽象的にしか感想を言えない人なのだろう。
俺も同じタイプだからよく分かる。
「先輩面白いですね。生徒会入る入らないは別として、お名前教えてもらっても?」
「いいとも! 私の名前は、赤坂あかさか 赤あか!! 君の名もお聞きしたいな!!」
「……ああ、俺は歯車 ネジといいます。以後お見知りおきを」
言葉が堅い!! という文句が後ろから聞こえたが振り向かなかった。
面倒くさい人ばかりだが、退屈はしなさそうだった。
♦♢
入学式場はだだっ広い。
「……あー怠い。怠すぎるな。どうしてこの私が君たち如きに演説なんてしないといけないのだろうね。形式にこだわるのも考え物だな」
本来厳格な筈の式なのだが、台に立って演説する校長はやけに気が抜けていた。
というか年齢的に言えば、
「いやあれ生徒じゃねえのか」
「̪̪シッ! 君しずかにしないと」
「すんません」
謝ったがどうなのだ。あれは。
偉そうに片眼鏡を掛けているその男は、どう見ても17、18歳ほどにしか見えなかった。
「私は私として、職務を遂行しないといけない訳だから仕方なく、大事だからもう一度言う、仕方!なく!君たちの学生生活の方針を先に示しておく必要があるね……」
当たり前だろ。
「まず初めに。ここ曼荼羅学園が存在する意味から……」
学長(?)が言うのは次の通りだった。
この学園――曼荼羅学園、は『人間性』を磨く場所。
学習方針は人に依って変えて良く、研究がしたいなら勝手に設備を利用可能で、スポーツがやりたいなら勝手に生徒同士でやって良く、友達が作りたいなら、勝手に作ればいい。極論、何もしなくても良い。
全て生徒の自由だそうだ。
「まあ、そんな訳だから、今日にでもこの学園で何をやるか考えておくといい。……もっとも、達成できるかは君たち次第ではあるけれどね……はー、怠い。」
演説台の脇から「先生そろそろ」と聞こえて、
「ああ……そうだな……あの子の紹介でも」
その時だった。
ぱきゅん。
空気が抜けたような音。瓶から栓を抜いたときのような音。
何かが倒れるような音が聞こえて、
「……遅かったか」
怠そうに突っ立っていた学長の、
右半身が吹き飛ばされていた。
「は……?」
状況が全然呑み込めない。分からない。知らない。
明らかに致命傷を負った学長の体からは血の一滴も出ていない。
それに、周りが驚く程静かだった。
「……!?」
周りの反応を見ようと急いで振り向いたが、誰一人として表情が動いていない。
何だ何だ何だ何だ何が起こっている。
「相変わらずですね。この学園は……」
自分の背後で一人だけ声を発している女性がいる。
さっき聞いた声だった。
ゆっくり後ろを振り向くと
「何色?……私の知っている色じゃない」
白色の銃口が自分のこめかみに突き付けられた。
持ち主は、
「十人十色、内が一色『白』の名において。君を殺す」
さっきの白い女性だった。
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