スポーツ系ホモ風味DKとオッサン趣味JK

 肌にまとわりつくような霧雨が、細い骨格ながら筋肉質な男子高校生DKの肌を濡らしていた。

 それも一人ではなく、二人。

 背の高い青っパツは気弱な気配。一方でチビの赤っ髪はキレ気味ツリ目。


「いいわぁ……いいホモだは」


 横縞よこじまひとみはガンギマリの目でDK共を注視する。唇の端から親指を突っ込み歯噛みして、舌先でベロベロ舐めながら言う。


「最高じゃねぇかオイ」


 瞳の声にDK共が振り向いた。青っ髪も赤っ髪もドン引きしていた。


「いや、横縞さん……コレ、何してんの……?」


 赤髪が青髪の疑問を代弁するかのように言った。

 当然である。

 そこはスポーツ系ホモ風味DK観察部の部室であり、霧雨は瞳が手にする霧吹きにより作られており、赤髪と青髪はもちろん


「俺たち……ホモじゃないんですけど……?」


 濡れそぼる赤い前髪をかきあげながら言った。

 ガジリ、と瞳は親指に歯を立て、霧吹きを顔面にぶっかけた。


「うるせぇホモだな」

「ちょ、いや――」

「うるせぇ」


 シュッ。シュシュッ。


「ちょ、やめ――うぅっ!」


 シュ。シュシュシュシュッ。

 霧吹きに追い詰められる赤っ髪。涙目だ。瞳は滾ってくるのを感じた。

 瞬間。

 青っ髪が赤髪との間に割り入った。


「あ、あの……やめてあげて……!」

「おいおいおいおいおい」

 

 瞳は鼻の穴を広げて青髪の胸板に霧吹く。


「解釈カンペキだぞオイ」

「え、あの――」


 シュ。シュシュシュ。

 シャツが濡れて肌に張り付く。

 シュシュシュシュシュ。シュシュ。


「あぁ!?」


 瞳が声を荒らげた。青髪はビクっと頭を庇う。まるで怯える大型犬だ。指導に忠実なキャラ作り。飲み込みの早いホモだが、しかし。


「何だよその下品な乳○はぁ!!」

 

 怒鳴り、瞳が執拗に霧吹く。


「や、やめ――!」


 背中を丸めた青髪は両肩を抱くようにして胸を隠した。


「女子かよ、テメェはぁ!」


 シュシュ。シュシュシュシュ。


「ちげぇだろぉぉん!? デカい青っ髪は伏し目がちに『くっ』て悔やみながら濡れた前髪をくしゃれ!? わからん!?」


 シュシュシュシュシュシュシュ。

 瞳の霧吹きに追い立てられ、青髪は赤髪の後ろに隠れた。

 ――否。

 隠れようとした。

 赤髪は仕込まれたとおりに青髪の頭をポンと叩いた。


「大丈夫か」

 

 交差する視線。止まりかける緊密な時間。

 シュシュシュシュシュ。

 

「ぶわ! 何すんだ!」


 半ギレの赤髪に、瞳が言う。


「マジになってんじゃねえよ、ホモ野郎」


 シュッ。


「ウチは風味を見たいんだよ。メスキャラがオス顔すんなや」


 新入生募集中である。

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