ジョーズなJKシーズンⅢ

――前シーズンまでのジョーズなJKは――


 ……ゴスだよ。

 みんなは『美女と野獣』って知ってる? ディズニーの奴ね。ある国の王子様が汚いババアの宿泊を拒否するの。キレたババアは王子様を野獣にして、真実の愛を見つけないと呪いが解けないとかなんとかいってさ。ヒロインと会って、なんやかんやで王子様は元の姿に戻るわけ。

 私ずっと、そんなのないって思ってた。だって野獣を好きになったのに人間に戻っちゃうなんて残酷すぎない? でもね、違った。心が大事で外見は関係ないんだもん。野獣でも王子でも、どうでもいいんだ。

 私もおんなじ。

 だってそうでしょ?

 アキは鮫島女子の呪いとされてた鮫化ウィルスで黒目がちなギザ歯JKになっちゃったけど、百七十年前に学園を作った鮫島大佐の子孫ニッキに拉致された私を助けてくれたんだよ? 

 キララも死ぬ前に言った。アキを信じてって。

 ジョイだって裏切ったりしてない。マリをチェーンソーでバラバラにしたけど何かの間違い。私は信じてる。

 ジョイも。

 アキも。

 だから――、

 だから、もうやめよう?

 サラを殺してもノートが生まれた事実は変えられない。ニッキのジョーズなJK計画だって止まらない。

 復讐は、何にも生まないんだよ。


「――アキ! 鮫に負けないで!!」


 傷だらけのゴスは床を這って叫んだ。血で濡れた右目が見つめる先に、人食い鮫化ウィルスに冒され黒目がちなギザ歯JKに成り果てたアキの背中がある。

 その、先で、


「……し、知らなかったんだってば! あんなクソみたいなレポート課題、誰がウィルスの活性法だと思うの!? 私のせいじゃない! 私じゃない!」


 ド派手な水着のサラが、鎖で封鎖された扉まで追い込まれていた。

 ドン! と扉が外から激しく叩かれ、


「シャーク……シャーク……」


 と、呻くような輪唱が聞こえる。鮫JKたちだ。サラが短かな悲鳴をあげ、尻もちをついた。黄色い水たまりが広がった。

 ゴスはかろうじて動く左手で床を這い、鮫に堕ちつつある背中に叫んだ。


「アキ、心の中の鮫と戦って! アキは、私の知ってるアキは、私の大好きなアキは! 絶対! 呪いなんかに負けない!」

「――は、ハァ!? 呪い!? アンタまだそんな――」


 サラの声に刺激されたか、アキが、がぱり、と大口を開いた。


「……シャーーーク……」


 私は、絶対、諦めない。ゴスは痛みに顔をしかめつつ躰を起こすと、噛みつかれるのも覚悟でアキに抱きついた。


「アキ……! お願い……! 鮫を、手なづけて!」

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