ジョーズなJK二話

――前回までのジョーズなJKは――


 ハイ。アキだよ。鮫島女子の二年生。夏休みが始まったと思った途端に登校日でもう最悪。来てるのは単位を落とした子とか出席日数が足りない子ばっかり。学校に来させてプールに入れて、そんなので記録を誤魔化すなんてアリ? 教育委員会にバレたら問題だよね。私なんてほとんど皆勤賞だし、成績だって学年で上から数えたほうが早いんだよ?

 じゃあなんでいるのかって? 

 

 隣のクラスの嬢王蜂クイーン・ビーサラにノートを貸しちゃったから。


 もちろん、サラのためじゃないよ? 取り巻きのマリが命令されて涙目でノート貸してくれる子を探し回ってたから可哀想になっちゃって。


 貸したらどうなったと思う?

 サラのバカ、私のノートを丸写しして提出したの。おかげで私も登校日ってわけ。まったく、人に優しくしてもいいことないよ。

 ま、おバカのジョイにも会えたし別にいいんだけどね。善行は損しか生まないかもしれないけど、友情は一生って言うし。


 でもジョイったら新任教師のニッキにご執心。私もそうだろ、だって。私にそっちの趣味はないっていうのに。


 ああ、もう、さっさと泳いでお家に帰って、ちゃんとした水着を買ってこよう。そう、木陰で膝を抱えるゴスみたいに。


 えっと、サメハダ水着って何?


 うん。分かるよね。ひとりで寂しそうにしてるんだもん。そりゃ声かけちゃうよ。

 ゴスはいつもどおりに目元が真っ黒。そんなメイクしてるから友達できないんだよ? なんて。まあ私が友達になればいいんだけどさ。でも笑っちゃうの。メイクは同じなのにちゃんと耐水性の化粧品なんだって。気合入りすぎ。


 そんな話をしてるときだった。

 女の子の悲鳴。プールは血で真っ赤っか。

 なんで誰も助けようとしないわけ!?

 ――うん。そう。じゃあ私が助けるしかないよね。やれやれ。



「どうしたの!? 何!?」


 プール中央、煙のように広がる赤。響き渡るホイッスル。


「プールから上がって! 早く!」

 

 完全にパニックだ。

 

「人が浮いてる!」


 ジョイが指差す先に、仰向けに浮かぶ子。

 助けなきゃ!

 アキはプールに飛び込む。鉄臭さに顔をしかめながら掴むと、


「重っ!?」


 まるで鉛だ。ひとりじゃムリと思った瞬間、軽くなった。


「手じゃない! 足を動かせ!」


 見れば、たしか競泳全国レベルの、


「キララさん!? 単位落としたの!?」

「今はいいだろ!?」


 キララは怪我人の脇から腕を回し入れ、水飛沫しぶきをあげた。


「勉強は苦手なんだ!」


 つづぬ。

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