ジョーズなJK ~The sharks weared JK~

 鮫島さめじま女子高等学院、夏休み三日目、早々の集団登校日。

 プール併設の女子更衣室で、アキはため息交じりにブラを外した。見回してみても洒落た水着ばかりだ。対して自分はスクール水着。こんなはずじゃなかった。

 バン! 背中を叩かれ振り向くと、


「アキも単位落とした!?」


 級友のジョイが横ピースを決めていた。クラス一の陽キャでバカだ。

 アキは首を横に振る。


「違う。巻き込まれたの」

「巻き込まれた? 何に? レイヴパーティ?」

「今どきそんなのやってる人いないって」


 苦笑し、諦めてスク水を着ようとパンツに手をかける――が。


「アキ!」


 鋭い声にアキは肩を落とした。


「アンタのせいで私まで学校に来るハメになったじゃない!」


 隣のクラスの嬢王蜂クイーンビーサラがド派手な水着で立っていた。傍に控える腰巾着のマリが続いて口を開く。彼女らしい地味なワンピースタイプだった。


「さ、サラがノートを写すんだから、あ、あ、あ、アナタが変えないと!」

「なんでアタシが」

 

 言って、アキはストンとパンツを落とした。気づけばジョイの姿がない。面倒になるとすぐ逃げる。友達甲斐のない奴。


「アンタは、私の、道具なの! 下僕なの! 下等生物は黙って従ってろ!」


 そうサラが吠えると、マリがそーだそーだと続いた。うざ。アキは手早くスク水に着替え、ダサッ! という罵倒を背に受けプールサイドに立った。

 肌を炙る太陽。焼けた床。日焼け止めは禁止。

 ぬるり、とアキの首に腕が絡まる。守ってない奴がいるなら


「大変だねぇ、アキも」


 当然のジョイ。 

 

「目の保養だと思って諦めようよ」


 視線の先には競泳水着にパーカーの新任教師ニッキ。なんでニッキかは知らない。

 アキは腕を外した。


「そっちのケはないって言ったでしょ?」

「えー?」


 鋭く響くホイッスル。


「そこ! じゃれてないでプールに入って!」


 口調とは裏腹に笑顔のニッキ。生徒の人気も頷ける。

 ――と、木陰に、寂しげに座る級友が。


「……アキも世話好きだよねぇ。ああいうのが趣味?」

「違うっての」


 アキは木陰の生徒に近づく。


「ハイ」


 ビクッと顔をあげるゴス。あだ名だ。


「は、ハイ……」

「なんか変わった水着だね」

「……別に」


 そっぽを向くゴスの隣に腰掛け、アキは水着を撫でた。びくりと跳ねる背中。


「うわ。ザラザラ」

「……サメハダ水着」

「なんでサメハダ?」

「別にいいじゃん……単に――」


 ゴスの声をかき消す、


「キャアアアアアアアア!!」


 甲高い悲鳴。プールが真っ赤に染まっていた。

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