書簡体を応用した伝統的な恋愛喜劇

遠藤遥えんどうはるかのSNSツール送信履歴

午前七時四〇分:大丈夫

       :陸斗は夜遅かたみたい

       :フリク練習ちゅう

午前七時四一分:りょうかい

       :5分後起きてこなかたら

       :やる

午前七時四三分:真希まきちゃん

       :(頑張ってスタンプ)



遠藤家の盗聴 午前七時四六分

(足音)

 陸斗:なんで起こしてくれなかったのさ!

 遥 :何度も声をかけました。起きなかったのはアナタでしょ?

(食器の音)

(足音)

(靴音)

(落下音? 水音?)

(扉の開閉音)

 陸斗:あっつぅ……(暑い? 熱い?)



工作員 萩原の証言

 ああ、分かってた。もちろんだ。

 ……顔写真さ。当然だろ? 顔が分からなきゃどうしようもない。

 違う! 何度も言ったろ!? あの子の足が早かったんだ。

 そう。

 仕方ないだろ!? じゃあどうやって止める! 言ってみろ!

 知ってる! 対象者との接触は厳禁だろ!?

 だから! 肩をぶつけるしかなかったんだ!

 あの子、怪我したのか?

 だろ?

 あっちは?

 だろう。我ながら完璧だよ。怪我人ゼロ。顔も見られてない。

 は? 背広? 顔を覚えにくくなるだろ?

 今の日本に夏に背広着て歩くリーマンはいないしな。

 サラリーマンって意味だ。

 そう。

 完璧だろ?

 は?

 いや。

 喋ってないって。ホントだ。

 は!? 監視してたのか!? 俺を!?

 怒鳴ったけどよ! しょうがねえだろ!? 引き止めないと――。

 いや、待てよ! 

 おい! それはなんだ!? やめろ! コトは上手くいったんだろ!?

 やめ――。



ファミリーマート駅前店、店外監視カメラの映像

 AM 07:50

 画面の右斜め上。曲がり角の手前。女子高生らしき人物がスマートフォンを操作している。頷き、鞄に入れた。ミニスカートを少し上げる。足を前後に開いてリズムを取るように揺れだした。

 画面外、曲がり角の奥から男子高校生が駆けてきた。こちらを見ていない。

 少女が駆け出し、衝突した。



■■■■■■詳報

 午前七時五十一分、■■が■■と接触。転倒。■■は開脚し■■を待った。■■が下着を凝視。■■が■■の頬を平手で打つ。■■が顔を伏せている間に■■は咄嗟の判断でサンドイッチで胸を汚した。想定通り■■が下着の形状を指摘。計画通り■■は■■を蹴った。後、■■は衣服の汚れに怒った演技をし、■■を右手で殴打。



中崎真希なかざきまきの鍵付きSNS 

 成功。パンツガン見してた♡ 絶対、忘れられないハズ。



午後九時〇九分 遠藤■■の私室 盗聴音

 ■■:女って怖ぇ……

 ■■:白、か……

(擦過音 紙? 布?)

 ■■:■■……■■!

(扉の音)(擦過音 布団?)

 遥 :あらー。

(盗聴中断)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る