ふぁーすとぱーすん、とれーらー
瞬くと、ちぎれ雲の間に大きな影が泳いでいるのが見える。背中に感じる土塊の冷たさ。手を見れば、薄汚れた布切れが巻かれ、乾いた血と泥がこびり付いている。
「おい! 大丈夫か!?」
振り向くと髭面の男がいる。顔にべったりと血糊をつけ、右手に剣を、背に弓を、厚布の鎧を纏っている。目線を下げると、よく似た鎧が視界に入る。撫でると手にざらついた感触がある。
「はは! 大丈夫だ、生きてるさ」
男が歯を見せた。
「ほら立て! 野郎、また戻ってくるぞ!」
指差す先、空を泳ぐ大きな影が、雲の裏から姿を見せる。青に映える赤い巨躯。広げた翼はさらに。首が、こちらに向く。
見渡せば、同じ姿の兵士が思い思いの武器を手に、竜を見据えている。
「おい。ホントに大丈夫か?」
肩を叩かれ振り向くと、すぐに胸元に剣の柄を叩きつけられる。手で押さえると、髭面の男は怪訝そうな表情で地面に刺していた剣を引き抜く。
「さっきまでの勢いはどうした? 一発食らってビビっちまったか?」
髭面の男が口の端を下げる。
「しっかりしろ! 次も仕留めりゃ、
雷鳴に似た咆哮が降り注ぎ、視界が揺れる。
「くるぞ!」
誰かが叫んでいる。
「盾を上げろ!」
髭面の男が叫ぶ。兵士が一斉に盾を上げる。慌てて続く。突風に膝が落ちる。押し込まれる。辺りが暗くなる。盾に通した腕を右手で掴み、顔を出す。真っ赤な壁に白い柱。開いた。ピンクの舌がある。盾に隠れた瞬間、熱波が身を焦がす。下草が一瞬で燃え尽き盾に通した腕が焼け竜の、
絶叫が響く。
暴風が頭上を抜け、大地が揺れる。
「かかれぇぇぇぇ!!」
隣で髭面の男が叫び、盾を投げ捨てるや弓を取り、矢を番える。
「うぉぉぉぁぁぁあああああ!!」
大勢が叫びながら駆け出す。足元の剣を拾い振り向く。駆け出す。
背後から、頭を飛び越し槍が投じられ、竜の背に刺さる。竜が長い首を振り回し集結しつつある兵士を薙ぎ払う。火焔を吹く。足を止める。すぐに背中を押される。
「行け行け行け! 今しかねえ! お前がやれ!」
頷き、走る。竜の大口に兵士の一人が上半身を呑まれる。振り下ろされる尻尾に五人が叩き潰され、一人に膝をつかせる。駆ける。
あなたは、丸まる兵士の背中に足をかけ、竜に飛びかかる。
空中で剣を逆手に持ち替え、上向いた竜の鼻先に――、
「よお、竜墜。テメエの名前までは忘れてねえよな?」
竜墜――Never coming soon.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます