青春の群像

「イイ先公だったよな、長谷道ハセドウ

「……どこが。ヤベー奴だったじゃん。壁に向かって革命がどうたら言ったり、地球がどうとか」

「あれはほら、環境委員会の顧問だったから」

「ジッサイ、コト起こしてんじゃん」

「コトって……ああ、テロ未遂?」

「何それ。知らねー」

「じゃあ何の話よ」

「あ? んなもん、アレよ」

「アレ?」

「ほら、パパ活してた子とさ」

「ああ……樹木キキさんだっけ?」

「名前までおぼえてねーし」

「いやクラスメイト」

「しらねーって。長谷道死んだら即で別のおっさんとくっついたじゃん」

「めちゃくちゃ覚えてんじゃん」

「うろ覚えだよ、うろ覚え」

「樹木さん、革命部だったんだと」

「ヤベーよな。長谷道、なんかコンビニ感覚で誘ってくるし、そのくせ選考セレクションあるとか言うし」

「それな。銓衡つったっけ? でもあれ、長谷道がンな感じだったって」

「は? どゆこと?」

「いや、聞いたのよ」

「何を」

「長谷道、ガキの頃に俺らみたいに悪さしてさ」

「俺してねー」

「いいから聞けって」

「聞いてるよ」

「で、こら逮捕だわって。腹ぁくくったんだと」

「何したん?」

「しらね。言ってなかった」

「んで?」

「興味でてきてんじゃん」

「いいから続き」

「なんか長谷道の親父さん、偉い人らしくてさ」

「……もしか」

「そ。無罪放免なんだと」

「……ラッキーじゃね?」

「いや、なんかそれがムカついたとかで」

「革命?」

「なんじゃね? もう分かんねーけど」

「いやいやいや。ヤベーだろ」

「何が? マジメすぎ?」

「逆、逆。ンな理由で言い出して、なんで生徒に手ぇだすよ。ヤバすぎんだろ」

「性欲が先行したとか」

「ンな感じじゃなかったじゃんよ」

「じゃあどんな感じよ」

「なんかいっつもイイ匂いさせてて」

「あれ親父さんの影響」

「は?」

「香道だかやってるとかで」

「はあ?」

「いやほら、この線香がそれ。知らね? 鮮紅の千光、お線香の長谷道って」

「香道ぜんぜん関係ねーじゃん」

「いや香道がらみで染工の知り合いがいて」

「センコウ? なんそれ」

「しらねーけど、潜航を専攻してっから戦功すごくて専行できんだと」

「意味わかんね」

「……長谷道、向こうでよろしくやってっかなあ」

「向こうでよろしくてもな」

「な。俺、ちょっと寄ったんだけど、親父さんめっちゃ痩せて」

「……寄るとか。理由聞いた?」

「胃穿孔だと」

「ストレス凄かったんかなあ」

「イイ人だったよな」

「いや、ロクでもねえって。てか同窓会前に墓参りとか、やめろや」

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