猫ちゃんとにゃんこ
「猫ちゃ~ん、にゃんこちゃ~ん、にゃんにゃんにゃん♪」
私は帰宅するなり猫なで声を出しつつ愛猫のニャンコフスキーを捕まえ、灰色のお腹にダイブした。お日様と猫砂のかほり。無抵抗の彼女に頭を抱えられたまま、
「にゅあ~ん、にゃんにゃんにゃん! にゃんにゃんにゅい、にゅぅ~ん!」
「にゃんにゃんにゃん♪ にゃんこちゃん今日も可愛いにゃん!」
では、なんだって私は脳を投げ捨てた発言をしているのか。
答えは今日一日にあった。
あんまり暇すぎて見ちゃった放送大学なんちゃら講座で、感情を出すと免疫力がどうたらやってたのだ。しかも、ちら見した雑誌の一人暮らしでやっちゃうことランキングに小躍りが四位入閣。やるしかねえと覚悟を決めた私ちゃん。
恥ずかしげなく恥ずかしいことを叫ぶためコンビニスイーツでテンション高め、万一のニャンコフスキー激怒に備えちゅーる買い、いざ勝負とお腹タイム。
「にゃにゃ~ん♪ ニャンコフスキーはにゃんにゃんにゃんこのにゃんこちゃん!」
無理したからか語彙に限界が。でもがんばってバカになろう、
と、私が気持ちしっとりしてきた毛並みの中心で息を吸うと、
「申し上げにくいのだが」
イケボが耳の産毛を撫でた。なんぞ。
まさか言霊が力を得てカレシなる異形を部屋に、なんて。
顔を離すと、ニャンコフスキーが口をくぁっと開いた。
「私は猫で、にゃんこではない」
「……え? ん? ニャンコフスキー?」
「うん。そう呼んでくれているのは分かって――」
私は思わずニャンコフスキーを投げ出しそうになった――が。
「投げないでほしい。すぐ黙る」
「え、あ……」
「もう若くないのか、こう、空中で腰を撚ると苦しい」
「あ、そう……」
「あと、後ろ足を膝にでもつかせてくれまいか。腰が抜けそうだ」
「ごめん……」
私はニャンコフスキーを膝に置いた。
「さて、もう黙るから、心して聞いてくれ」
「……はい」
「猫とにゃんこは違う。奴らには気をつけてほしい。これでも、私は君を気に入っているんだ」
「……えと、え!? 違うの!?」
問うと、ニャンコフスキーがにゃーんと鳴いた。
――いや、見分け方は。
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