めちゃシコうどん
「――実は、近くにめちゃシコなうどん屋さんがあるんだよね」
「……めちゃ、シコ、ッスか?」
落ち着け。冷静になれ。大西は胸の内で繰り返し唱える。
きっと高橋センパイがいっているのは『つるつるしこしこ』のシコであり、決してシコシコピュッピュのシコではない。はずだ。だよな?
ごくんと喉越しもよく生唾を飲み込み、大西は確認のために問い直す。
「ピュッピュ?」
「は?」
ぐにょりとうどんのように捩れた眉根の形からして、シコシコピュッピュ的なシコではなく、つるつるしこしこ的しこなのだろう。センパイはしこのシコ的意味をご存じないとみた。
となれば、あわよくば彼女だったら良いのになと思う女の子ランキング常在一位に合法的にシコと言わせまくるチャンスだ。せっかくだし脳内ボイスレコーダーにたっぷりとシコ語を録音したい。
大西は唇に湿りをくれ、高橋先輩に尋ねる。
「ど、どうシコいんスか?」
鼻息が荒くなっていた。
高橋センパイは怪訝な顔をしながらも素直に答えた。
「すぐ近くだし行ってみよ? なんかもう、エッッッッッ! って感じだよ」
「……なんですと?」
雲行きが変わった。ガチでシコいパターンもある。同時に高橋センパイのうっかり彼女になってくれたら良いのになランキングは急激に下がった。暫定十位くらい。シコを知っててうどん屋をシコいと認識し、男の後輩にしこの話をふるとかシコすぎる。シコすぎるならランキングアップか?
「七位」
「ん?」
「いえ、なんでもないです」
思わず暫定ランキングを口走った己を恥じつつ、大西はめちゃしこなうどん屋について行った。場所はビジネス街の合間に突然あらわれた田園と小川の傍に立つ平屋造りの洋風屋敷だ。一階建ての洋風の城と言えば分かるだろうか。平屋は平屋だ。塔とか立ってるように見えるけど、おそらくダミー。そう、たとえるなら――。
「……ラブホ?」
「ちょ。やめてよ」
高橋センパイが頬を染めつつ俺を
全自動の二枚扉をくぐると、壁一面を使ったパネル式の食券販売機があった。システムはラブホだが写真はすべてうどんだ。
また、その写真が。
「……え、めちゃシコやん……」
見るからにしこいうどんだった。
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