霞の森に暮らす幻の民! オタクに優しいギャルは実在した!!
エイル王国領、最東端にある霞の森は、人類未踏の地として知られる。天を衝く山と深淵に至る渓谷、それらを覆う無限の森――入った冒険者の多くは二度と帰らなかったが、数人の生還者は口を揃える。
「美しい女だけが暮らす集落があった」
帰らざる者は増えつづけ、魔王軍の侵攻に伴い、森の探索は禁じられた。
その後、十年。
絶望的な戦力差をひっくり返した少年が、霞の森の前にいた。
「……勇者カズヤ様。よろしいでしょうか?」
明日の探索に備え、もう寝ようかというときだった。控えめに叩かれた扉を見つめ、カズヤはため息をつく。
「……入って」
微かに軋みながら扉が開き、可憐な少女が緊張の面持ちで入ってきた。勇者の接待に生娘をよこす。よくあることだが、
「いらないよ。必要なら抱かれたって言っときな」
「えっ!? で、でも……!」
少女の慌てようは、期待の顕れだろうか。
だが、いらない。
「……誰にも言わないって約束できる?」
ぶんぶんと首を振る少女。
カズヤは微苦笑しつつ、窓の外に広がる霞の森を見つめた。
「俺、ハジメテはオタクに優しいギャルって決めてんだ」
「――はい?」
困惑も当然だ。この世界にギャルという語は存在しない。しかし、
「前の世界には、オタクに優しいギャルが――いるはずだった。ギャルはオタクに優しいって、俺はそれを信じてたんだ」
オタクをこじらせて本物を探しに
カズヤは赤子から生き直し、二つの世界の知識を合わせ、ある結論に至った。
「ギャルJKはね……グループで山や崖を登り、野営し、魚を釣り、農作業を学んだり昆虫を採取したり爬虫類に詳しかったりしてオタクにめちゃくちゃ優しいんだ」
王宮魔法士にもできない高速詠唱。少女が絶句する。
「知ってるんだ。気づいたんだ。霞の森の奥に彼女らはいる!」
カズヤは万獣を殺す目をして考察する。
「アールヴ――エルフには光と闇の二種族がいる。森にグループで暮らし山に登りキャンプし魚を釣り虫を探しバイクに乗り――オッサン趣味を満喫してオタクに優しくて美人で――」
深く息継ぎをする勇者の、血走った双眸には、命を賭す執念が宿っていた。
「白ギャルはエルフ。黒ギャルはダークエルフなんだよ……!」
「え、えと……」
「そして俺は、オタクだ」
唇の端を吊り、カズヤは霞の森を睨んだ。
さあ、オタクくんに優しくしてもらおうか、ギャルどもよ!
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