第21話 リリムさんの力
頭上に浮かぶ無数の剣はまっすぐ俺の方へ向かってきた。
・・・・・・すごい!本当に速いスピードだな、、、
リリムさんは俺を本気で倒しに来ている。
素直に感心しつつ、頭を働かせる。
俺は、とっさによけることは無理だと判断し、剣をすべて吹き飛ばすことにした。
〈【風魔法霊級】風神の吐息〉
剣は高く舞い上がり霧散している。
よかった、どうやらしっかり捌くことができたみたいだ。
「やっぱりレイさんは強いですね。もっと私と戦いましょう!」
「ええ!」
気づけば俺の口角は上がっていた。
リリムさんも初めておもちゃをもらった子供のように無邪気に笑っている。
ああー、戦闘ってこんなに楽しいものだったんだ。
「じゃあ、リリムさん、行きますよ」
「はい!いつでもどうぞ!」
〈【炎魔法霊級】紅蓮、【土魔法霊級】隕石大衝突〉
俺は先ほどよりも強い魔法を二方向から放った。
これなら、リリムさんのさっき使った技では防ぎきれない。
リリムさんはそれすらも読んでいたかのように大胆不敵な笑みを浮かべる。
「【剣魔法】忘却の剣、【剣魔法】剣舞」
俺の魔法の一つはさっきのように消され、もう一つの魔法は躱された。
「【剣魔法】剣生成、じゃあ、今度は私から行きますよ。【剣魔法】剣舞」
その言葉が言い終わると同時に目の前に剣を持ったリリムさんが現れた。
そしてそのまま、俺は数十か所を斬られた。
しかし俺はそのことに動じない。なぜならそれは別に当然のことだからだ。
いくら身体能力を魔力で補強しても地の力が違う。
リリムさんは、まだ傷一つついていない。
まずいな、、、このままだと出血多量で俺が先に倒れてしまう。
〈【水魔法上級】氷壁〉
ひとまず、これでリリムさんの攻撃をやり過ごす。
どうすれば、今の状況からリリムさんに勝てる?
俺はあれこれと思考を巡らせる。
しかし、こうしている間にも、氷壁はひびだらけになっている。
壊れるのも時間の問題だろう。
・・・・・・もうこれしかないな、
俺は氷壁が壊れるのと同時にその場から飛びのいた。
「レイさん、もう終わりですか?ならこれで終わりです」
かろうじて致命傷は避けたものの、リリムさんの攻撃に直撃する。
・・・ここまでは予定通りだ。
俺は、痛みをこらえながら、今ある魔力をほとんど使って、リリムさんへ必殺技とも言える魔法を放つ。
「【4属性複合魔法霊級】森羅万象」
「なっ!?!?……これはやばいですね。私の【忘却の剣】でも防ぎきれません。では仕方ないですね。私も本気で行きます。【剣魔法奥義】剣神乱舞」
『【感情魔法】哀』
俺の魔法とリリムさんの奥義は互いにぶつかり合う・・・はずだったが、そうなることはなかった。
お互いの魔法が突然消滅したのだ。
「もう何しているのよ、リリム。あなたの庭の結界じゃ、今の衝撃は防ぎきれないわよ」
「あっ、ミュウ!ごめん、ちょっと戦闘に夢中になっちゃって、」
「それは別にいいんだけど、そこにいる子は誰?」
「あー、レイさんだよ!クロノスタス様から、「預かってて」って言われてるんだ」
「そうなの、、、え?・・・」
会話から察するに、今の俺たちの魔法をかき消したのはミュウさんらしい。
「ミュウさん、お久しぶりです!」
「えっ、、、あなたもしかしてレイ?」
「はい!」
「でも前より大きくなってない?」
「ああ、それは、あの後、クロノと本契約したからですよ」
ミュウさんは元から硬直していたけど、それに加えてリリムさんの動きも固まった。
「レイさん、、、」
「はい?」
「クロノスタス様と本契約しているんですか?」
「ええ、一応」
「「ええー!?」」
二人ともすごい驚いている。
クロノと本契約していることは、そんなに珍しいことなんだろうか。
・・・・・・
するとその時、突然、鉄をのせられたように、俺の体は重くなった。
やばい・・・さっきの魔法に魔力を使いすぎた。
意識が朦朧としてくる。
そして、俺はそのまま地面に倒れた。
「レイ!?」
「レイさん!?」
「フラン、いますね?」
「はい」
「今すぐレイさんを部屋に連れて帰って、治療してください」
「かしこまりました」
・・・・・・
リリムとミュウは庭に残り、二人で話しをしている。
「リリム、レイはいったいなんで倒れたの?」
「さっき、ミュウがかき消した魔法に力を注ぎすぎたのではないですか?・・・それより、レイさんが前より大きくなっていたってどういうことですか?」
「そのままの意味よ。前といっても2,3日前だけど、会ったときは2歳児ぐらいの大きさしかなかったのよ」
「え、、、でも今日の決闘では、本気じゃないけど、私の速さについてきていたんですよ」
「ふふっ、それがもし本当だったら、数年後には私たちを脅かす存在になっているかもしれないわね」
「そうですね。・・・それにしても、相変わらずミュウの魔法は規格外ですね」
「そう?」
「ええ。私たちの魔法を一瞬でかき消しちゃうんですか」
「次は私に勝てそう?」
「いえ、今回も無理そうですね」
「あらっ、残念」
ミュウはにこりと笑った。
リリムは、それを見てこれが絶対王者の風格なのだと感じる。
「それより、今日はどうして私の家に来たんですか?」
「それはもちろん、あなたと模擬戦をするためよ」
「それは建前ですよね」
「・・・実は、あなたのお父さんが魔族領に攻め込むことを決めたのよ」
「なっ!?」
「本当にそれだけよ」
驚くリリムと落ち着いているミュウにフランが話しかける。
「ミュウ様、リリム様、お話中にすいません。レイ様が起き上がりました」
「ミュウ、この話はもういいです。今は、レイさんのところへ行きますよ」
「ええ」
二人は足早に、レイの部屋へと向かった。
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