第16話 表の大会 後編
〈どうしてミュウさんは表の大会に出ないんですか?表のランキングでも、簡単に1位になれますよね?〉
〈それはね…ただめんどくさいからよ〉
〈めんどくさい?〉
〈そう。裏のランキングはあまり知られてないから、一位をとってもそこまで騒がれないけど、表のランキングはめっちゃ騒がれるからね。私は、それがすごくめんどくさいから、出てないのよ〉
〈なるほど〉
〈ほらっ、そろそろ決勝トーナメントが始まるわよ〉
ミュウさんは視線を俺からステージに向ける。
俺も【魔力眼】を使いつつ、視界をステージへ動かした。
そして、決勝トーナメントが始まった。
最初は、双剣使いと斧使いの戦いのようだ。
双剣使いと斧使いはお互い、鍔迫り合いになったり、互角の戦いををしている。
だけど・・・やっぱり遅い
なんていうか動きがすごく遅く見える。
お互いがスローモーションで戦っているようで、正直見ててもあまり面白くない試合だ。
隣にいるミュウさんも同じ気持ちなのかひどく退屈そうにしている。
リリムさんの対戦相手はリリムさんを恐れて棄権しているし、今日はもう、面白い試合は見れないだろう…
・・・・・・
そして、試合はそのまま決勝戦まで進んでいった。
リリムさんの対戦相手は相変わらずみんな棄権しているし、他の人たちの試合も動きが遅すぎて戦いにすらなっていなかった。
期待はしていないが、そろそろ決勝戦が始まるため、俺はステージを見る。
決勝戦は、リリムさんと人族のバルカンさんっていう人の戦いだ。
俺は、さっきまでの試合と同じように、バルカンさんが棄権して試合は終わるだろうと予想していたが、そうなることはなかった。
俺はバルカンさんが棄権しないことを不思議に思い、隣に座っているミュウさんの方を向く。
…ツンツンツン
そして、人差し指でミュウさんの二の腕をつついた。
〈レイ、どうかしたの?〉
〈あのバルカンさんていう人は棄権しないんですか?〉
〈ああー、そういうことね。・・・しないわよ〉
ミュウさんは何か納得したような表情をして、俺の質問に答えた。
〈えっ、バルカンさんはリリムさんと戦えるぐらい強いんですか?〉
〈ええ。一応、バルカンは裏ランキング896位だからね。かろうじて戦うことはできるんじゃない?まあ、少し面白い試合になると思うから見てみるといいわよ〉
ミュウさんはニコッと笑う。
どうやら、この試合はこれまでのどの試合とも違うものらしい…
ミュウさんの言葉を聞き、俺は改めて【魔力眼】にこめる魔力量を高める。
そして戦いの火蓋は切って落とされた。
・・・・・・
結果から言うと、最後の戦いは0.1秒もかからずに終わった。
試合が始まると同時に、バルカンさんは倒れていたのだ。
周りにいる観客の人たちはポカンと口を開けて、何がおこったのか分からないっていう顔をしている。
多分この中で状況を理解できたのは、俺とミュウさんぐらいだろう。
〈レイ、何が起きたのか分かった?〉
〈はい。リリムさんが戦いの始まりと同時にバルカンさんへ手刀をくらわせていました〉
〈へえ、よく見えたわね。正解よ。じゃあ、これで表の大会は終わりね。私はそろそろ、魔族の領土である魔界に戻るわね〉
〈あっ、そうなんですか?〉
〈ええ。レイは一か月後にある裏の大会は見に来るの?〉
〈はいっ、一応〉
〈へえ、じゃあまたその時に会えるわね。今日は楽しかったわ。また会いましょう・・・・・・チュッ〉
ミュウさんはフードをとって俺の頬に触れるだけのキスをする。
そして、ニコッと笑って、どこかへ消えてしまった。
俺は、驚きと羞恥心で顔がどんどん真っ赤になっていくのを感じた。
・・・しばらく頬の熱は冷めそうにない。
しばらくして、頬の熱も冷めてきたので、俺はイヤリングでクロノをよんだ。
・・・さすがにクロノに顔が真っ赤になっているのを見られるわけにはいかないからね。
・・・・・・
しばらくすると、クロノはどこからともなく現れた。
〈レイ君ー、呼んだ?〉
〈クロノ、試合終わったよ〉
〈もう終わったの!?早かったね。ところでレイ君、顔赤いよ。大丈夫?〉
まだ残っていたのか。
・・・俺はひどく焦る。
〈!?!?!?大丈夫だから。それよりこれから時の森に戻るのか?〉
〈…うん?なんでそんなに慌ててるの?〉
〈べ、別に慌ててないよ!〉
しどろもどろになりながらも答える。
〈…?まあ、いいけど。今日は、この人界にある宿に泊まろうと思ってるよ〉
〈ん?そうなの?〉
〈うん。・・・ねえレイ君、明日僕と人界でデートしない?〉
〈うん!もちろんいいよ!……ってええーーーー!?〉
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