第15話 表の大会 前編

 ミュウさんと話していたら、突然周囲の空気が重くなった。

 何が起こったのかコロッセオへ視線を向けると、中にいる人たちの表情が、どことなく真剣そのものになっていた。


 剣を構えたり、何かを唱えだしている人もいるな…

 俺はしっかり習得した【魔力眼】で会場を見つめる。


 ところで、ここには1万人ぐらい人がいるけど、どうやって戦うんだろ…

 そのことを考え、唸っていると、そんな俺の様子に気づいたのか、隣に座っているミュウさんが説明してくれた。


〈レイ、もしかして今から何をするか知らないの?〉

〈はい…〉

〈そう、じゃあ説明してあげるから、よく聞いておくように!〉

〈はいっ!〉

〈えっとねー、今からするのは一次予選よ〉

〈一次予選?〉

〈そう。表の大会では、全部で2回予選をしてそこから、決勝トーナメントをするのよ〉

〈なるほど、、、〉

〈まず一次予選はバトルロワイヤルね。あそこのステージにいる人たち全員で残り1000人になるまで戦うのよ。っで、勝ちあがった人が2次予選に進むわ〉


 ミュウさんがそれを言い終わると同時に、戦いが始まった。

 いたるところで、煙が上がり斬撃音が鳴り響いている。


 一次予選中はさすがにミュウさんもしゃべらない。


 戦いが始まった直後は、【魔力眼】を使っても、巻き上がる煙に目が慣れず、戦いが見えなかったが、それもだんだん見えるようになってきた。


 なんていうかめっちゃ遅い……


 剣をふるう人の動きはスローモーションを見ているみたいだし、魔法を使ってる人も詠唱しているのに、よくて上級までしか使っていない。

 何人かいい動きをしている人もいるけど、それでも多分俺なら0.5秒で倒せるだろう。


 そうこうしているうちに煙も晴れてきて、ステージがよく見えるようになった。

 最初にあれだけ人がいたのに、今ステージにいるのは、1000人だけになっている。


 そこで俺は【魔力眼】の発動を一旦解除しようと思ったが、横からミュウさんに止められた。


〈レイ、まだ、【魔力眼】は解除しないほうがいいわよ。これからすぐに2次予選のバトルロワイヤル始まって、1000人いる人たちが、100人まで減らされるから〉

〈えっ、そうなんですか『ドーン!』!?〉


 俺が言葉を言い終わらないうちに、2回目の戦闘が始まった。さっきよりもひときわ大きい音が鳴り響いてる。

 それになかなか人も倒れない。

 そんななか、ひときわ異彩を放つ人がいた。

 ステージの上にただ立っているだけなのに誰も攻撃しないのだ。


〈あの、ミュウさん〉

〈どうかした?〉

〈あの真ん中に立っている人ってもしかして、リリムさんですか?〉

〈そうね。じゃあ、どうして誰もリリムを攻撃しないか分かる?〉

〈1位の人だからビビってるとかですか?〉

〈違うわよ。誰も近づけないのよ〉

〈へっ?どういうことですか?〉

〈レイは、魔力が違いすぎると近づけないことがあるって知ってる?〉

〈あっ、もしかして時の森みたいな場所のことですか?〉

〈!?よ、よく知ってるわね。そう、あそこにいる人たちはリリムに攻撃しないんじゃなくて魔力量が違いすぎてできないのよ〉

〈えっ、じゃあリリムさんの魔力量ってどのくらいなんですか?〉

〈そうね、レイにはさすがに及ばないけど、大体私と同じぐらいか、ちょっと少ないぐらい、あるんじゃない?〉

〈あの、リリムさんって、裏ランキングでいうとどれくらいの順位にいるんですか?〉

〈3位よ〉

〈3位……〉

〈そう、前戦った時も強くなってて少し焦ったわ〉


 ミュウさんは苦笑いしながら言っているけど、これってすごいことなんじゃ・・・


〈さあ、そろそろ2次予選も終わりそうよ〉


 俺が、ミュウさんと話している間に、試合も終盤になっていた。ステージに立っている人たちは一部を除いて疲弊しているように見える。


〈これ決勝トーナメントっていつからするんですか?〉

〈1時間後よ〉

〈じゃあ、みんな疲れたまま戦うんですか?〉

〈いや、ポーションを使って体力は回復させるから大丈夫だと思うわよ〉

〈ポーション?〉

〈もしかして、ポーションも知らないの?〉

〈はい……〉

〈あのね、ポーションっていうのは主に3つに分けられるわ。一つ目は疲れた肉体を回復するための体力回復ポーション、2つ目は魔力を回復する魔力回復ポーション、3つ目は、そのどちらも回復することができるエリクサーよ。魔力回復ポーションとエリクサーは高価だからほとんど使われないわ。ポーションっていうのは、こんな感じのものよ。分かった?〉

〈よくわかりました!ありがとうございます!〉


 後で、クロノにポーションの作り方聞いてみようー

 そんなことを考えていたら、突然隣から肩をたたかれた。


〈ねえ、レイは何で私に対して敬語でしゃべるの?〉

〈年上だからですけど…〉

〈できれば、普通に話してもらえない?〉

〈じゃあ3年後、裏の大会でミュウさんに勝てたら敬語はやめることにします〉

〈ふーん。じゃあその時が来ることを楽しみにしてるわね!〉


 また強くならないといけなくなった理由が増えた気がする。

 俺はこれから、どれくらい強くならないといけない理由を作るんだろう…

 それは置いといて、俺はずっと、ミュウさんに聞きたかったことを聞くことにした。


〈あのミュウさん!〉

〈ん?〉

〈どうしてミュウさんは表の大会に出ないんですか?表のランキングでも、簡単に1位になれますよね。〉

〈それはね……



 神谷レイのステータス(詳細)


 魔力量    3600000


 リリム・ルビーのステータス(詳細)


 魔力量    2200000

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