第12話 クロノとの距離が近づいた

〈レイ君、ずいぶん楽しそうだね〉


 クロノが笑顔で迫ってくる。いや、目が笑ってないんだけど…

 俺は焦りながらクロノに返答する。


 なんで俺が焦らないといけないのかは分からないけど……


〈クロノ、これには深い事情があってだな…〉

〈へぇー、それって、僕の帰りよりも大事なことだったんだー?〉

〈クロノさん、本当にすいませんでした〉


 俺は、クロノの勢いにつられて思わず敬語で謝ってしまった。


〈別にいいよ。ホイップ、シャルル何があったの?〉


 クロノがホイップさんとシャルルさんに何があったのかを尋ねる。

 顔は笑っているが目が笑っていない。

 待って、クロノがめっちゃ怖いんだけど・・・


 クロノがそう言った直後、ホイップさんがクロノに今まであったことを全部話した。


〈実は、・・・・・・〉

〈へぇー、レイ君、ずいぶんイチャイチャしてるじゃん〉


 やばいクロノの目が据わっている。…クロノ絶対怒ってる……

 何かをして、クロノ機嫌を直さないと


 ・・・


 あ、そういえば、この前の俺の誕生日にドリヤードさんが、フラワーティーの粉が入っている小瓶をくれたっけ。

 これをあげたら許してくれないかな。


〈クロノ、本当にごめん。お詫びになんだけど、これをクロノにプレゼントするから、許してほしい〉


 クロノは、驚いた顔をして俺を見ている。


〈これ僕にくれるの?〉

〈ああ。日頃のお礼みたいな感じ〉


 俺がそう言った瞬間、クロノは目で見てわかるぐらい表情が変わった。

 据わっていた目から、明確に喜びの意思が感じられる。


〈レイ君からの初めてのプレゼント。うれしいな。いいよ!今回だけは許してあげる〉

〈ありがとう!〉

〈それにしても、今気づいたけど、レイ君また強くなってるね〉

〈うん。一応この世界にある魔法は全部覚えたから、、、〉

〈えっ、、、それ本当?〉

〈うん〉

〈ねぇレイ君、僕がいない間どれくらい修行したの?〉

〈ほとんど寝ないで200年間ずっとだけど…〉

〈ふーん、そうなんだ。レイ君ちょっと待っててね。ホイップ、シャルル、ちょっとこっちにおいで〉


 そう言って、クロノはホイップさんとシャルルさんを連れて、どこかへ消えた。

 しばらくして、3人が戻ってきたときには、ホイップさんとシャルルさんをは、ボロボロになっていた。


 うん。何があったのかは詮索しないでおこう……


〈あっ、そうそう、レイ君に大精霊会議で話し合った内容を伝えようと思ってたんだ〉

〈それって、クロノが参加していたやつか?〉

〈そうそう、いろいろ話し合ったんだけど、主な話題は二つだったよ〉

〈その2つって何なんだ?〉

〈今から説明するよ。1つ目は前も言ったけど、裏の大会についてだね。会場のこととか、招待する人たちについても話しあったよ〉

〈会場はもうできているのか?〉

〈もちろん!創ってきたからね。それで招待する人についてなんだけど、いつものメンバーとほとんど同じだったよ〉

〈裏の大会っていつするんだ?〉

〈この森で20年後だね〉

〈じゃあ、表の大会はいつするんだ?〉

〈それは、この森であとだいたい、1か月後ぐらいじゃない?〉

〈なぁ、それって俺も見に行っていいか?〉


 俺は何となくそんなことを聞いた。


〈それってどっちに?表の大会?裏の大会?〉


 クロノが、まじめな顔で返してくる。


〈できれば両方見たいかな。あっでも無理だったらいいよ〉


〈ふっ、レイ君ならそう言うと思って席はとっておいたから、当日は、僕が会場まで送ってあげるよ〉


 クロノはニコッと笑って言った。

 本当にクロノには助けられてばかりだなー…


〈そんなことより、レイ君!大精霊会議で話した2つ目の話題のほうが重要なんだ!!!〉

〈えっ、何を話したの?〉


 俺は、クロノの真剣な雰囲気につられて緊張感をもって尋ねる。


〈・・・僕が、〉

〈僕が?〉

〈レイ君はすごいんだ、ってをほかの大精霊に自慢しておいたことだよ!みんな、自分の場所に来てくれるのを楽しみにしてるって!〉


 えっ、、、大事なことってそれ!?ていうか何してくれてるの?どんどんハードルあがっていくじゃん。


〈あの、クロノ、〉

〈言わなくてもわかるよ!僕に感謝したいんでしょ!」〉

〈はー〉


 俺はクロノの、様子を見ていたら怒る気もうせていた。


〈まぁ、一応ありがとうなのかな?〉

〈えへへ、どういたしまして、レイ君〉


 それから、俺とクロノは修業中のこととか、大精霊会議のこととかを話し合った。

 気づけば、月が顔を見せ、あたりもすでに暗くなっている。


〈ねぇレイ君。〉

〈ん?どうしたクロノ?〉


 クロノは顔を赤らめてもじもじしている。


〈あの、もしよかったらなんだけど、今日は一緒に寝ない?〉


 えっ、、、俺の思考が完全にフリーズする。俺がクロノと一緒に寝る!?


〈だめ、かな?〉

〈いや、ダメじゃないけど、急にどうして?〉

〈・・・それは、長い間、レイ君と会ってなくて寂しかったから〉


 俺は心臓が飛び出るかと思った。

 俺の顔がどんどん赤くなっていく。

 俺はそれを必死に隠しながら返事をした。


〈分かったよ。今日は一緒に寝よう、クロノ〉

〈うん!〉


 クロノは満面の笑みを浮かべて、俺の布団に入り込んできた。

 あのー、ちょっと近すぎません?


〈じゃあ、レイ君おやすみ〉

〈おやすみ、クロノ〉


 疲れていたのか、クロノはすぐに眠った、が俺は全然眠ることができなかった。


 やばい…全然眠れねー。


 そしてその日、俺は眠らずに夜を明かした。

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